MLT(ナショナル・シアター・ライブ)「ワーニャ」。
チェーホフだな。「ワーニャ伯父さん」って、そういえば不覚にも、読んだことも観たこともないけど。それはそれで、ネタバレなしで物語を楽しめるから、いいだろ。
アンドリュー・スコット さんが、ワーニャ伯父さんの役をやるのかな?って思ったら。
いや、甘かった!
なんと一人芝居、男も女も、十人からの登場人物を全部、ひとりでやるという離れ業だ。早変わりでもない、衣装もメイクも変えないし、特に声色を変えるでもなく、演技力だけで一本芝居を見せ切る、いやあ、とんでもないモノを観てしまった。
しかし、原作のワーニャ伯父さんについて何も知らないでいきなりコレを観るのは、かなりツライです、正直に言えば。
しかもロシア語の名前がみんな英語名前に変えられていて、主人公がワーニャという名前じゃあないし。「大学教授」が「映画監督」に設定替えされてたり、俺もシェイクスピアのどれかだったらいきなり楽しめたんだろうけど。やっぱこれは、ちょっとは予習しとくんだった。
とはいえ、中盤くらいから、だんだん設定とストーリーが分かってきたあたりで、こいつは凄いモノを観ているぞ、って分かってきたし。
こういうことができる役者に、なりたかったなあ、人生をやり直せるんなら、さ。
劇の終盤では、主人公と同じことを考えていたな。「俺にだって夢があったのに、いろんなものを守るために犠牲にして生きて来た、でも今分かった、俺の信じていたものはニセモノだったって」。
でも、それでもやはり、生きていかなくてはならないんだ。って、チェーホフって、そういう話だよね。
あー。またヤバイもの観ちゃったなあ。