まひろの衣装の色が変わったのは「大人になった」という表現なんです | えいいちのはなしANNEX

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先週の終盤、まひろの衣装が、いままでずっと黄色だったのが、オレンジ系(紅梅色、というのですか?)に変わりました。
「直秀を土に埋めたとき汚れたから、着替えたんでしょ?」
という声もありますが、これは「まひろが、ひとつ大人になった」という表現だということで、間違いないと思います。

親友(だと思う)の非業の死に接して、まひろは変わった、覚悟を決めた、わけです。「もっと学問をして、世を正します」と言い切る女性になりました。あっ、伊藤野枝だ!
大河ドラマというのは主人公のビルドゥングスロマンです。
春夏秋冬、一年間かけて、主人公が成長していくのが中心テーマです。
それを象徴的に表すために、「主人公の心を揺さぶる事件」が起こったあとは、主人公が変化したってことをビジュアルで表すために、衣装の色が変わるんです。
「鎌倉殿の13人」でも、ある事件をきっかけに、北条義時の衣装が青から濃紺(というかほとんど黒)に変わりましたよね、という指摘をいただきました(ありがとうございます)。このあと義時は、汚れ役をかぶる非情な人間になりました。衣装が変われば性格も、というか人生観が変わる、わけですね。

大昔、吉永小百合さん主演の「源氏物語 千年の恋」という映画がありました。劇中劇で天海祐希さんが光源氏をやってた映画ですけど。
この映画、紫式部が源氏物語を書きながら半生を追想するんですが、冒頭で藤原為時一家が越前に赴任するあたりから、主人公は「むささき」という名前で呼ばれていました。

えー、それはないだろ、とも思ったんですけど。まあ、たった2時間の映画で主人公の名前がコロコロ変わったら観客に不親切だなら、しょうがないかな、と。
つまりこの吉永小百合サンは、子供の頃から紫式部のマインドを持ったまま、まっすぐに育った、ってことになるんでしょう。
まひろは、違うんですよ、たぶん。
大河ドラマというのは、一月にはノーバディーだった主人公が、春夏秋冬を経て、十二月にはサムバディになってる、そういう枠組みで出来ているのですから。
決定的に人間が変わる瞬間というのが、何度か、あるんです。
私は、おそらく「まひろ」の衣装の色は、成長するに従って、虹色のグラデーションで変わっていくのではないか、と予想しているんですが。
春に橙、夏に赤、そして秋にはついに「紫」になって物語を書き始める、ってのはどうですか。

たとえばさあ、「真田丸」で、主人公の名前が真田幸村ではなく信繁だ、って言われて、みんな、なんだかなあって思って観てたじゃないですか、そしたら大詰め前で自分で「幸村」に改名するってシーンがあってさ、視聴者は、うおーって沸き立ったものです。
あれを、今回もやるんじゃあないかと思うんですよ。
「今年の主人公は、まひろ、です」って言われて、視聴者はみんな、モヤモヤしてると思うんですよ。自分たちがよく知ってるアノ名前じゃあないから。
そこで、「今日から私、紫式部です!」って言って、バーンと紫色の衣装を着て登場する「爆誕」シーンがあったら、とんでもなく盛り上がるんじゃあないですか?

と、ここまで書いたところで、「あれっ、まひろは五節の舞のときに、センターで紫の衣装を着てるぞ」ってことを思い出してしまいました。ありゃあ。
しかし、あれは予告編というか視聴者サービスというか、ちょっと早目に「紫式部」の片鱗を見せたんだ、ってことにしておきたい、と思います。そもそもあれは倫子さまの代理で出ただけで、ホントのまひろじゃあないんで、ってことで。