士農工商 の話を先日、しましたけど。
士農工商って言葉は「身分制度」ではなく「世の中のあらゆる職業」という意味です。
と、いう話の大前提として。
「身分」と「職業」は全然違うカテゴライズだ、ってのは、いいですか?
同じく、農民と言っても上は名主・庄屋から、下は小作人の水飲み百姓まで身分は様々にあります。
商人といっても、上は殿様に金を貸してる豪商もいれば、店を持たない行商人も、まあいろんなレベルのがいる。
で、農民も商人も、トップレベルのやつは、殿様から苗字帯刀を許される、つまり武士と同じ身分だったりする。
「士農工商」というのは、この順番に身分が高いっていう意味では全くない。単に職業分類、それも「よくある代表的な職業をざっくり四種類並べてみた」だけに過ぎない、つまり「まるっと、国民みんな」って意味の四字熟語なんです。
儒教の概念で、なんとなく社会的意義が高いとされる順番に並べてるってのはあるけど、「農民が商人より身分が高い」なんて誰も言ってませんし、「これ以外には職業はない」なんてことも誰も言ってない。
で、たとえば医者も教師も、職業の分類であって身分じゃない。
将軍様の身体を診る医者は当然そのへんの貧乏侍より身分は高い。長屋の八っあん熊さんの相手をする医者は、身分は町人と同じ。
教師と言っても将軍に進講する学者や藩校の教授と、寺子屋の先生では身分も違う。
消防士も、武家の家を担当する「大名火消し」と、町人エリアを担当する「町火消し」がいる、早い話が武士の家の火事は武士が消し、町人の家の火事は町人が消す。
つまり「医者」「教師」「消防士」という身分はない。
敢えていえば、士農工商それぞれの中に、医者も教師も消防士もいる、って考えればいいでしょう。
全国民を四つの身分に分けたものという意味では全然ない、ふわーっとしたイメージに過ぎない言葉だ、と思っておけばいい言葉です。