「真田丸」で北条氏政（四代目）がわりと大きく取り上げられていたおかげで、高嶋政伸が小田原城の「北条五代祭り」に招かれて喜んでました。
小田原のひとは北条氏が大好き、というのは間違いないところでしょう。
戦国大名の有名どころで、大河ドラマの主役にまだなっていない、というと、やはり北条早雲の名前が出るでしょう。直江兼続とか井伊直虎とかマイナーな名前が主人公になってるんだから、そろそろ北条の番がきてもいいはずでしょ。
そこで今度は北条氏を主役に、ということになれば、やはりまずは初代の北条早雲を、ということになるでしょう。三代目、四代目は大河の脇役としてはいつも出てきますが、常識的に言って、主役にするのは難しいです。
ところが、「北条早雲」を大河の主人公にするというのも、かなり難しい。その理由を従来、以下のように列挙していました。おさらいしますと。
１、早雲の前半生には諸説あって、少なくとも「素浪人から出世じた」というドラマチックな物語はウソらしい、ということになっている。
２、早雲が小田原城を築いたのではなく、晩年に乗っ取っただけ。地元としては弱い。
３、そもそも彼は「北条早雲」という名前ではない。北条氏と名乗ったのは二代目から。彼は「伊勢新九郎」または「伊勢宗瑞」という名前。ドラマのタイトルに堂々と「北条早雲」と使えないのは、知名度的にイタイ。
４、信長、秀吉、家康という全国区の三人のうち、誰かが出てこないと、全国的に視聴率を取ることは極めて難しい。早雲は時代が早すぎて、まったくカスらない（直虎だって、少なくとも家康は準レギュラーで出てた）。
５、北条氏は江戸時代に国持ち大名として生き残れなかった。すなわち小田原市民にとって、北条は「むかし、ここにいたらしい人」に過ぎず、「オラが国のお殿様」ではない。「地元の熱意が薄い」というのは致命的。
６、小田原には県庁がない。誘致活動に動くのに「県レベル」と「市役所レベル」では力に雲泥の差がある。神奈川県にはほかに売り物がいくらでもあるから、県庁の全面支援は難しい。
ところが、同じく前半生が不明で、子孫が生き残っていない、しかも負け組の明智光秀が、まさかの大河主役になれたのに鑑み、少なくとも
上記の1、5、6は「致命的ではない」ということになりました。
情勢が変化したいま、北条早雲(仮)の可能性がにわかに取り沙汰火されています。
やりようによっては、いまこそ北条早雲の可能性ある、と言いたいところですが。
しかし、4については、むしろますます重要度が増してしまった、といえます。「麒麟が来る」で注目されているのは、やはり信長、秀吉のエキセントリックぶりで。こいつらとふんだんに絡めるのが、光秀主人公の大アドバンテージです。
時代が同じなら、どうとでもこじつけることはできます(独眼竜政宗も、風林火山も、無理矢理に早くから有名人を出してました)。しかし、北条早雲の場合、時代が早すぎて、信長も秀吉も出しようがない、というのは致命的なんですよね。
うーん、どうやって、もう一翻つけるかだなあ。
と思っていたら、パトレイバーのゆうきまさみ氏が「新九郎、奔る」という漫画を連載してます。
少年・伊勢新九郎（のちの教科書に北条早雲と書かれることになる人物の若いとき）が主人公で、がっつりと応仁の乱のことをやってますね。
北条早雲という名前の人物は実在しないし、前半生に不確定要素がありすぎる、とさっき書いたのですが。最近では、だいぶ「伊勢氏の分家で幕府奉公衆の出身」という線で固まってきています。前半生まったく不明の明智光秀よりも、むしろ分かってきたほうです。
ちなみに応仁の乱は、わりといま流行りなので、大河でやったら面白いかも知れません。
応仁の乱をがっつりやった大河としては、かつて「花の乱」がありました。日野富子（三田佳子）が主人公です。
団十郎、幸四郎（いずれも当時）が出演、松たか子、市川新之助（いまの海老蔵）のデビュー作、野村萬斎が細川勝元、というなかなかの布陣でしたが、視聴率が大河史上最低記録を長く保持する結果となりました（平清盛が更新）。
思うに、市川森一先生の脚本が高尚というか意欲的すぎた。
その最たるものが、主人公に「出生の秘密」を設定しちゃったことです。これやると、とたんに物語が「史実っぽくなくなる」ので、大多数の「大河は歴史のお勉強になる」と思ってる一般国民がソッポ向くんですね（ちなみに、「平清盛」も、主人公に出生の秘密があります（忠盛の実の子ではない）。私は、これが花の乱の最低記録を更新した原因のおおきな一つだと思っています）。
とにかく、前半生が不明だからって、突飛なことはやらないに越したことはない、ってことです。
というわけで、北条早雲は、もしかしてこの先、アリかも知れません。北条早雲という人物は登場できませんけど。