政党政治に腐敗・癒着は「憑き物」である、という話。原敬はなぜ暗殺されたのか再録 | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

 藩閥と戦った政党内閣、爵位を辞退した平民宰相、庶民の味方というイメージを我々は抱いていますが、原敬の進めた経済成長政策は実際のところは政商、財閥の利益を優先したものであり、現在に至る「利益誘導型腐敗政治」の原型を作った、という批判もあります。
 原が暗殺されたのも、そうした「庶民の怨嗟」がくすぶっていたからに他なりません。
 政党内閣であるなら選挙に勝たなければならない。選挙に勝つためには有権者に利益を回さなければならない。
この時代の有権者は税金を一定以上納めた金持ちだけです。
だから、国家予算は(庶民のためではなく)政商、財閥のためになるように回さねばならない。
そのためには、官僚から権限を政治家に取り上げていかなければならない。
 原敬が推し進めたのは、「あの手この手で官僚組織を弱めて、権限を取り上げていく」施策です。
 私服を肥やすつもりはなくても、政権を維持するためには、経済成長政策という名の「財閥べったり政治」を推進しなければならない。
こうした政治で原敬は手腕を発揮したので「政党政治」は軌道に乗ったのです。
いっぽう、普通選挙を求める声はうまく黙殺する。「なんだ、政党政治ってのは結局、金持ち優遇政治じゃないか」となるわけです。
これは「政党政治の宿命」みたいなもんで、原敬の人格とか識見とかとは関係ありません。
しかし、庶民は「騙された」と感じたことでしょう。庶民の味方だと思っていた首相が、実は財閥ベッタリの金権政治家だった、となれば、あいつを殺さなければ日本はよくならない、と思い込む人間が出てくるのも無理のないところです。
しかし結果的にいって、そうした批判、悪評は「暗殺された」という批判が全て押し流してしまい、原敬は「偉人」として祭り上げられる結果となりました。
だから「なんで、あんな優秀な政治家を殺すバカがいたんだろう、おかしい!」と、後世の我々には不思議にしか思えなくなるわけです。当時のリアルタムの世評というのは、えてして忘れられてしまうのです。

 原敬の政治力は突出していたので、彼の不在による「政党政治」への打撃は、とてつもなく大きかったというのは事実のようですが、「政党政治というのは、癒着、腐敗と容易に結びつく」という実例を示したのも原敬であり、「政党政治の衰退イコール日本史のマイナス」と一概に言っていいのか、という疑問は残ります。
 少なくとも、原敬を暗殺した青年は「原敬を殺せば、日本はマシになる」という信念を持って犯行に及んだわけですから。