「忠臣蔵の吉良上野介は。どうしていつも悪役なのか?」って、あたりまえじゃん、だって忠臣蔵だから | えいいちのはなしANNEX

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 吉良上野介って、ほんとは名君だったという説もあるのに、忠臣蔵に出てくるときは、どうしてあんなに極悪人なのか?

それは話は簡単、「忠臣蔵」だからですよ。


仮名手本忠臣蔵というのは、フィクションの芝居の外題です。いろはにほへと、の四十七人の忠臣が蔵の中からゾロゾロ出てきます、というお芝居です。つまり、大石内蔵助率いる赤穂浪士を、最初から「忠臣」である、善玉である、イイモノである、と大声で宣言している「お話」を忠臣蔵と呼ぶのです。


但し、タイトルで「仮名」といってるように、登場するのは浅野でも吉良でもなく、塩谷判官、高師直という、足利尊氏の時代の実在の武将の名前になっています。
塩谷は「判官」というくらいだから絶対善玉、それに敵対する「高家の」師直は徹底的な悪役としてえがかれている、娯楽作品であれば当然の演出です。
つまりこれは室町時代初期を舞台にした物語であって、問答無用の悪党・高師直をみんなでやっつけて喝采する人気演目なんです。


ところが。日本人は、この「忠臣蔵」というお芝居のストーリーを、いつのまにか「赤穂事件」の真相を描いたものである、と思い込んでしまったんです。現代に至るまで、浅野と吉良の話を「忠臣蔵」とフツーに呼んでいることからも、それは明らかです。フィクションを事実と混同しても平気なんです、日本人は。だって、そのほうが面白いから。善が悪を倒す話が見たいから、です。

なにげなく「忠臣蔵」と言った時点で、吉良は悪役に決まっちゃうんです。だって、そういうフィクションの物語が「忠臣蔵」なんですから。
ですから、「忠臣蔵で有名な吉良上野介」というのが、そもそも間違いです。史実の赤穂事件の話をするなら、不用意に「忠臣蔵」というフィクションの名前を使ってはいけないんです。

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