「勧進帳」というのは、弁慶はいったい、何をやっているのか? って歌舞伎ファンなら誰でも知ってるか | えいいちのはなしANNEX

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このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

義経主従は、奥州藤原氏のテリトリーに逃げ込むため、山伏に変装して旅をしています。
彼らは、北陸の「安宅関」で止められ、何者だと問われます。

弁慶は「我々は大仏を再建する勧進(寄付金集め)のために旅をしている者だ」と言い、ほれ、このとおり寄付金を集めていますよ、と「勧進帳」を取り出し、「だれそれがいくら、だれそれがいくら」という寄付名簿を大声で読み上げます。
しかし、寄付金集めは真っ赤なウソですから、この「勧進帳」の中身も実は真っ白です。
それを弁慶は、あたかもびっしり名前が並んでいるかのごとく、寄付金リストをアタマの中ででっちあげ、口から出任せで「読んで」みせたのです。
すげえ、すげえぞ弁慶。


関所の奉行(富樫)は、こいつら義経一行だな、と感づいていたのですが、あまりに見事な弁慶の芸に感服して、ってわけでもないでしょうけど、「武士の情け」で一行を通してやりました、とさ。

昔の新聞記者は、「勧進帳」ができれは一人前といわれました。
現場で取材した内容を、社に帰って原稿にしていたら締め切りに間に合わない、そんなときに「電話草稿」というのをやります。その場で書いた原稿を電話で読み上げて、社にいるものに書き取らせるわけです。


しかし、さらにツワモノになると、その場で原稿も書きません、いきなり社に電話して、アタマの中で文章にしながら喋って、記事を空中で作ってしまう。この技を「勧進帳」といいます。昔の新聞記者は、ベテランになるとみんなこれをやっていました。あなたも試しにやってみてください。そうそう出来るワザではないですよ。