トムヒの「ハル王子」が、今の英国そのものに見えた。 | えいいちのはなしANNEX

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先週末から「ヘンリー4世 一部、二部」「ヘンリー5世」と、トム・ヒドルストン主演の3本を続けに見たわけですが。
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 「ボクの大好きなハリー、ボクの愛するフォルスタフ」を堪能した、かっていうと、いやいや。ああ、こういうハルとホットスパーもありか、てゆうかコイツら本当はオレが考えていたより、もっと深い人間なんだ、って思いを強くした、ある意味打ちのめされたっていうか。

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第一部の陽気なシーンからして、こいつら、芯のところではものすごく醒めてるんだよね。

「このお祭り騒ぎは、いつまでも続きはしない」ということを、みんな知ってるんだ。

ある意味、フォルスタッフ一党にとっても、ハル王子にとっても、この「一部が始まった瞬間が、絶頂」で、あとはゆるやかに「何か」に向かって落ちていくだけだ、ってことなんだ。
「青春が終わる、人生が始まる」とは、よく言ったものだ。いや、それは「何者」か。

ハルはともかく、フォルスタフが妙に醒めているのが、驚愕。特に「名誉ってナンだ」ってあの名セリフね。

あれを、あんなふうにやるとは。いや参った。

フォルスタフは道化だ、という作り方を、していないんだ。まるで哲学者だ。

そうだよね、この「歴史シリーズ」のなかで、誰一人、そんなに能天気でいられるはずがない。

これを作ったBBCは「EUを離脱した、テロが頻発する、戦争と直に向き合ってる、現代の英国の放送局なんだ」ってのを、忘れちゃいけないんよね。そうなんだよ。

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このトムヒのハル王子がさ、最初から「ものすごい計算しながら生きている」、ちょっと時々ゾッとするほどクールな本性を見せるのが、なんかたまらないよね。

そういえば途中でカンバーバッジの「リチャード3世」を見ちゃんで、余計に対比してしまったんだけど。

ハルとリチャードは、実はよく似ている。陽気にみせかけた徹底的なマキャベリスト。

リチャードのほうが「悪人を気取っている」のを公言してるだけ逆にヒトがよく見える。

トムヒ、怖い。ときどく凄く怖い。

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続けてみて良かったな、って思ったのは。

第二部に出てくるフォルスタッフの「小姓」という子供が、この芝居のラストでモノ凄く印象的な去り方をするんだけど。

たぶん、この子供が少し成長したんだな、ていう少年兵が、「ヘンリー5世」に最初から最後まで、ずーっと出ている。

セリフはほとんど(全く)なくて(ということは映画オリジナルなキャラなんだけど)。

これが重要なシーンにことごとく印象的にそこにいて、そして・・・ああ、ネタバレになるから言わないけど。

上手い、これはもう、上手い。

しかしヘンリー5世のオープニングはびっくりした。

だってさあ、えっ? いきなり葬式なんだよ。誰の・・・ええー、そっからはじめるの? 

って、これもネタバだから言わない。

とにかく、シェイクスピアを読みつくしている人間だと自負してればいるほど、これは見なければダメだ。

 

ヘンリー4世、5世のはなし、つづく。

ところで…このプール、泳げるのかな?

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