「るろうに剣心」の「人斬り抜刀斎」の斎って、どういう意味のネーミングか | えいいちのはなしANNEX

えいいちのはなしANNEX

このブログの見方。写真と文章が全然関係ないページと、ものすごく関係あるページとがあります。娘の活動状況を見たいかたは写真だけ見ていただければ充分ですが、ついでに父の薀蓄ぽい文章を読んでくれれば嬉しいです。

るろうに剣心 」の主人公は、かつて「人斬り抜刀斎」と呼ばれていた、そうですね。

剣客には○○斎、って名前の人物が多いですけど。これ、どういう意味のネーミングなのか、というのを考ええてみました。

「斎」は訓読みで「いつき」と読みます。大和朝廷の時代、天皇の娘の一人が伊勢神宮に入り、独身のまま神につかえる仕事をしました、これを「斎宮」(さいぐう、いつきのみや)といいました(平安時代ごろまでいた)。この斎宮の世話をする役所が「斎宮寮」で、そこの長官「斎宮頭」だった藤原氏の一族が「斎藤」と名乗ったのが、全国の斎藤さんの始まりです。
伊勢だけでなく、他の由緒ある神社にも「斎王」「斎院」といった人がいます。
神様のそばに「居て、仕える」ということでしょうか。つまり、何らかの神様に、身を清めて仕えている人物が、。「斎」ということですね。

そういえば、剣法の道場には、なからず神棚があって、「天照皇太神」「鹿島大神宮」「香取大神宮」と大書された軸が飾ってあります。「るろうに剣心」の薫さんの道場にも、そんなのありましたよね。

つまり、剣術を学ぶということはイコール剣の神様に仕えるということです。

だから、剣の道を究めようとする者が「○○斎」と名乗るんじゃあないでしょうか。人斬り抜刀斎だって、ただ人を斬るために刀を抜いてるんじゃなくて、抜くたびに剣の神様に祈ってるんです。なんか、そういうのが日本の文化、って感じじゃないですか。

と、ここまで話をしたら、「斎は、書斎の斎でしょ、○○軒とか○○庵とおんなじで、自分のもってるアトリエの名前を屋号にしてるんだよ」といわれました。

あ、そうか。そっちの説明のほうが簡単で、的を得ている(笑)。

でも、せっかく思いついた推理を、簡単にひっこめるのは癪なので、ちょっと言い訳をしてみます。

書斎、というのは、心身を清めて書物を読むところ、ですから、文人が書を通じて神と向きあうところ、ということでしょう。
ならば、剣客が「~斎」という場合、彼の居場所は書斎というよりは、神棚のある道場、稽古場だ、と言えるんじゃないでしょうか。
自分の道場を「~斎」と名づけるとすれば、そこが神と向き合って精進する場所だからです。

「○○斎」は、文人や剣客に限りません。東洲斎写楽とか、葛飾北斎とか、いますよね。

本は八百万の神の国ですから、料理には料理の神様、陶芸には陶芸の神様、絵画には絵画の神様がいていいわけです。そういう神様のおめがねにかなうものを作りあげよう、と日々努力しております、という意味で。「○○斎」と名乗ってる、というふうに考えたら、どうでしょうね。
斎は、道を究めんとする者、の意味、ということで、いかがでしょうかね。