正直この新しい友人に、夫はいささか戸惑っている様子だ。
キャメル25歳モロッコ人。 がちがちのイスラム教徒。
つながりの元を辿れば、私の夫とキャメルの父親の友情から始まる。
この父親には今年7歳を迎えた末息子、ビレンがおり、
そのビレンがうちの息子の同級生であり、不幸にも2人で仲良く留年したのが発端だ。
私の夫はいつしかビレンの父親になつき、彼の営業する小さなショップにしょっちゅう顔を出しては長話をするようになったのだ。
キャメルはビレンの何番目かの兄だ。
さすがはアラブ人、兄弟姉妹は無数にいて、総勢何名になるのか私にはわからない。
キャメルは夫に言う。
僕らは正義と戦って死んだら、必ず天国へ行く。
天国では74人の女性が暖かく迎えてくれるんだ。
澄んだ目で懸命にイスラムの教義を説き、夫に入信を薦める。
しかし、夫の耳に届いたのは上記の内容のみらしい。
貸りてきた分厚いコーランの本を片手に、興奮気味にそう報告してくれる夫。
オマエのような不純な動機をアッラーが受け入れてくれるものか。
神を真剣に信じる彼を否定はしない、が肯定しきるのもちょっと抵抗がある。 でも心優しい彼とは親しくしていたい。 しかし対応を間違えば彼を傷つけてしまうかもしれない。 どうしたものかと、夫は少々悩んでいる。
今夜も、夫はキャメルの家へ出かけて行った。
なんでも、夫が鬱に悩まされるのは、よからぬ霊が夫の体内に入り込んでいるせいだそうだ。なので彼が除霊を施してくれるらしい。
…。


