もう1年以上も前の話だが、今でも昨日のことのように思い出す。

その日は、サプライズでパーティーのもくろみがあった。
学校で私たちを教えてくれているフランス人、マリエールの
快気祝いと誕生パーティーだ。
彼女は向こう2週間、鼓膜の手術で講義を休んでおり、
この日やっと復帰してきた。

午後の休憩時間に入ったとたん、クラスのリーダー格、
アラブ人のゾラの号令と共に全員が一斉に動く。瞬く間に…

テーブルがくっつけられ、クロスが敷かれ、アラブの手料理やお菓子、
ケーキにジュース類が並べ立てられる。

ものの2分だったろうか。
電気を消したその教室に、目を白黒させたマリエールが引っ立てられてきた。 
そしてみんなでハッピーバースデイを歌ってプレゼントを渡した。

マリエールはもちろん感激していたが、私も実はとても感動していた。
その日の午後の授業はキャンセルで、みんなで飲んでは食べておしゃべりをした。
アラブ女性達が立ち代り入れ替わり、ひっきりなしに薦めてくる、
甘ったるいアラブのお菓子を、私は全て有難く頂戴し、
これまた甘いジュースで何とか胃の中に流し込んだ。 

苦しくも楽しい、有意義な1日だった。





ラヴィエクサントリック ラヴィエクサントリック


※1年ほど前、私は滞在許可証取得の条件である語学研修を、いろんな国籍の人間の間で数ヶ月間受けていた。 そこでの繰り広げられた、私の大切な珍体験を綴っていきます。


夜明けの草原をひたすら走り、アルルへ。
その日は、9時からフランス語の授業だった。
留学生の語学学校とはまた違う。
フランスに移民し、この国で暮らしていく外国人達の為の語学訓練だ。
このクラスは無料どころか、政府がお金を支給してくれる。

今日のそのクラスには、私を含め全部で9人いた。
私以外は見事にアラブ女性ばかりだった。
彼女達はアフリカのチュニジア、モロッコ、カメルーンなどフランス語圏から移民してきた人達で、話すことはできるが読み書きが殆どできない。

まず、フランス人の先生が、私達にテキストを配る。  読み、書きの能力テストだ。 
この結果により、またクラスのレベルが別れていくのだ。 
至って、大事な試験だろう。 みんな真面目に取り組む。

…かに見えた。

ふと、先生がトイレに立つと、驚いた事に私以外のみんながわっと騒ぎ出し、
相談が始まり、カンニングが始まった。

私の答案用紙も「ちょっと見せて」と持っていかれ、
寄ってたかって丸写しをしている… 
先生が帰ってきて慌てるわたし。 かまわず堂々と写し続ける女性たち。
先生もそんな女性達に慣れているのか、知らん顔を決め込んでいる。

これは一体何なのだ。

明日のクラスわけ、間違いなく全員同じクラスだろう。
でもなんだか愉快なアラブ女性達、
私は彼女達にフランス人以上の好感を覚えた。
そんな第一日目だった。
夏が来ると我が家にご滞在になる王妃様は、人肉鎖国をしている。

なんだその気味の悪い表現は…と思われた方。
それよりも王妃様とはいったい誰様やねんと思われた方。




我が家は夏場のみ、義祖母が同居する。 
名前をReine(レーヌ)さんといい、その意味は、何と「王妃」様だ。
王妃様は高齢の為、目も耳も機能が衰え、歩く事さえ大仕事で、外出は全くできない。
よって、私が王妃様の雑事の一切をせっせとこなしている。


王妃様は生ハムとチーズとチョコレートにお目がない。
私は申し付けられるたび、王妃様御所望の品々を買いにスーパーへ走る。 
床を汚してしまわれる事もあるし、
洗濯物をやたらお溜めになってからお出しくださる事もある。
しかし、王妃様はいつもすまないね、と私を労わってくださるのだ。
私は、王妃様の為ならどんな努力も惜しまない次第である。

さて、そんな王妃様だが、彼女は根っからの誇り高きフランス人だ。
彼女はフランスを愛してやまない。 
フランス国は世界で一番美しく、歴史を誇り、文化教養も高いと信じておられる。
よって、彼女はフランスのものしか受け入れられず、フランス以外お出になった事もなく、またこれからもお出になろうとは思わないらしい。
体を張って鎖国を決め込んでいらっしゃる王妃様は、
私の祖国、日本に砂糖は存在しないものだと思っておられる。 
甘い物好きな王妃様から憐れみをいただきながら、未開国からやってきたという事になっている私は、最近面倒くさくて何も否定しなくなってきた。


フランス革命からタイムスリップしてきたような、今年90歳を迎える王妃様。
私は何気に、彼女のいるこの生活を気に入っている。
今年の夏もおこしいただけるだろうか。