『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答! -22ページ目

『英語職人』時吉秀弥の英文法 最終回答!

本当にわかる英語とは?!英語、英文法、その他の外国語の学習、言語学などについていろいろ語ります。

今日スーパーで見かけて面白いなと思ったたことを。

「麺」を表す英単語は本来noodlesという複数形が普通です。ところが日本語では、映画のタイトルや商品名になるものは複数形の-sや過去分詞の-edが省かれる(例:アイスコーヒーとiced coffee)のが普通なので、日清のカップヌードルも日本語でカップヌードルズとはなりません。

 

ところが日清、「世界の」となると英語本来のnoodles になっているんです。

今日たまたまスーパーで気づいて「おお!」と思いました😲。考えた人はきっと「世界」を意識して名前を変えたのだと思いますね。会って聞いてみたい😁。

 

ちなみに私はタイのトムヤムクン味が大のお気に入りです。

 

さて、ちなみに茹で上がったパスタの麺はぐちゃぐちゃしてとっても不可算名詞っぽいのに、実際にはnoodles という可算名詞なのは英語のちょっとした謎です。

これは想像なのですが、茹で上がった麺はぐちゃぐちゃして形に注目が行きにくいけれども、乾麺の状態ならはっきりとした固体で形に注目が行きやすいので、noodlesは乾麺のイメージを表しているのではないかな〜と個人的には思っていますよ。

前回に引き続き、日本語の「まだ」の意味を探ります。

 

前回あげた「まだ」のポイントを再掲します。

 

  • 「まだ」の基本意味は「ずっと同じ状態が変わらず続くこと」
  • しかしその奥には①「まずい状態が続くことで圧力が高まる(我慢の限界が近づく)」②「同じ状態が続くところから時間が止まる・静止のイメージが出る」
  • そして「静止のイメージ」から、「事態が動くかと思ったら実は変わらない、という『意外な気持ち』」の意味が出てくる

 

「まだ寝てる」のように「(寝てる)状態が変わらず、ずっと続く」という基本の意味から、「まずい状態の継続」により、「まだ寝てるのかよ。いい加減にしろ。」というふうに「我慢の圧力が高ま」ったり、「まだそのままだ」のように、「状態が変わらない=時の静止」のイメージが出たり、さらに、「まだ夜も明けないうちに」のように、「本来、夜が明けているはずなのに、実は夜のまま時間が止まっている」というイメージから「意外性」という意味がでるというお話をしたのが前回までの内容です。

 

前回のブログでお話したとおり、「まだ」の根っこの意味に興味を持ったのは「昨日はまだ太陽が出ていたのに、今日は・・・」という時の「まだ」に「何だこれ?」という感覚を持ったからです。みなさん、この「まだ」の意味を外国人にちゃんと説明できるでしょうか?私も「?」となりました。そこでちゃんと考えてみます。

 

表題にある、かくれんぼで出てくる「まーだだよ」の「まだ」は、要するに「隠れることができない状態が変わらず続いている」という、「まだ寝ている」とか「まだ宿題をやっていない」と同じ、「状態が変わらず続いている」ことを示す、「基本的な『まだ』」です。これを「そいつはまだマシだよ。」の「まだ」と比べてみましょう。

「まだマシ」の「まだ」は、「もっとひどい状態に比べれば、なお良いと判断される」状態を表現しています。つまり「想定していることよりマシ」という意味で「意外性」の意味に近そうです。つまり「まだ夜も明けないうちに」の「まだ」で出てきた「意外性」と共通点がありそうです。

 

「まだ夜も明けないうちに」の「まだ」では、「本来なら夜が明けてから動くのが普通なのに、実際には暗い状態がずっと続いたままだ」というという「時間の止まった」感覚が「まだ夜も明けない」→「まだ夜も明けないうちから」という「意外性を表す」使い方へと広がっています。この「事態が展開していると思ったら、意外にも事態は変わらないままだ」という「意外性の『まだ』」が「そいつはまだマシだよ」の「まだ」へと繋がっているのではないでしょうか。

 

「そんなのまだマシだよ。こっちなんてさぁ・・・」という時、「こっち」では「そっち」と比べて、もっとひどい方向へ事態が「進行・変化」しているのだ、ということを表そうとしています。そして「意外性の『まだ』」は、「事態が展開していると思いきや、変わらないままだ」ということを表しています。「そんなのまだマシ」の「まだ」は「こちらに比べれば、そちらは事態が止まっているように見えてしまうよ。こっちはそこからさらに、もっとひどい方に進行・変化・展開しているんだ」ということを表していることになります。

 

さて、ここまでわかってくると 、「昨日はまだ太陽が出ていたのに、今日は・・・」という時の「まだ」の意味が射程に入ってきます。この「まだ」は、「昨日はここまでで事態が止まっていたのに、今日はさらに事態が進行・展開してしまっている」ということを表しているわけです。

 

まとめてみましょう。

本来「状態が変わらず続く」ことを表しているのが「まだ」です。しかし、ただ単に「状態の継続」という意味だけではありません。元々は「いまだ」という言葉であり、漢字を当てれば「未だ」となるように、「まだ」には「達成しないままの状況が続く」というイメージが含まれています。つまり「満足いかない状態の継続」というイメージがあるわけです。ここから「まだなの?」という苛立ちや、「あいつはまだまだだな」、という「未達成」の意味も出てきます。「あいつはまだ寝てるよ」とか「宿題をまだやっていない」などもこうした「満足いかない状態の継続」からくる「圧力(不満)の高まり」のイメージを付随して持つことになります。

そして、「状態が変わらず続く」というところから「時が止まる」イメージ、「静止」のイメージが出ます。さらには「状況が変わっていると思ってたのに、実は変わらず、動いていないままだった」という「意外性」のイメージへとつながります。「まだ夜も明けないうちから」の「まだ」にはこの「状況が止まったまま(まだ夜のまま)であることの意外性」が表されています。

最後に、「あるレベルで止まっている状態と、さらに進んでしまっている状態を比較する『まだ』」があります。「まだマシだよ」や「昨日はまだ太陽がでていたのに、今日はもう雨だし、寒いし。」の「まだ」がこれです。「そんなのまだマシだよ。こっちなんてもうさぁ・・」では「そっちの状況はそれで止まっているよね。こっちはさらにそこからひどい方向へ進んでしまっているんだ」ということで、「昨日はまだ太陽が出ていたのに、今日はもう雨だし・・」というのは、「昨日は太陽が出る、というレベルで止まっていたのが、今日はそこから進んで雨になって・・」ということを表しています。

 

実はこの「昨日はまだ太陽が・・・」という例文は、今勉強している中国語(台湾華語)の教科書にあった、

 

昨天出大太陽,今天就又颳風又下雨。(中国大陸の簡体字では「昨天还出大太阳,今天就又刮风又下雨。」)

(昨日はまだしっかりと太陽が出ていたのに、今日はもう風が吹くし雨も降ってるよ。)

 

という例文から取ったものです。この「還」(中国大陸の簡体字では「还」)は未達成という意味での「まだ」という意味で使われるのがおなじみで(沒來(没来)=まだ来ない)、これが「まだ(太陽が出ていたのに)」という意味で使われるのが不思議であり、でも、日本語話者としてこの異なる2つの「まだ」のイメージが何となく理解できてしまうことから、ちょっと考えてみたくなりました。前回のブログで言及した英語のstillと同様、中国語の「還」も日本語の「まだ」も偶然ですが、とてもよく似た構造・意味の広がりを持っているようです。

(おしまい)

 

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日本語に、「まだ」という言葉があります。色々な意味を持つ言葉で、日本語ネイティブとして、使い方はわかるけれど、いったいこの言葉の正体は何なのだろう?と考えてみました。

 

きっかけは「昨日はまだ太陽が出てたけど、今日はもう雨だし、寒いし。」という言葉を口にしたことでした。あれ?この「まだ」は何なのだろう?「まだ宿題をやってない」とか「あいつまだ寝てるよ。」という時の「まだ」とは随分違うな。でも同じ言葉だから、全く別の意味というわけではないよな、と思ったのです(英語に関してもいつもこんなことを考えています)。

 

手元の精選版日本国語大辞典(小学館)をみてみると、

 

「まだ」は「いまだ」の変化した語

 

とあります。基本の意味は「まだ宿題をやってない」のような否定語を伴う場合と、「あいつまだ寝てるよ。」のような肯定表現に用いられる場合ですね。どちらも共通するのは「ある状態がずっと続いている」ということです。前者(宿題をやっていない)は「あることが実現していない状態が今もずっと続いている」、後者(あいつまだ寝てるよ)なら「ある事態が変わらず今も続いている」ということです。

 

しかし、例えば

 

まだ夜も明けないうちから彼は起き出して」

 

という言い方もあります。これは「ある状態がずっと続いている」というのとは少し違う感じがしますね。つまり「ずっと夜が明けない状態が続いている」ということが言いたいのではなく、「普通なら夜が明けてから動き出すものなのに、なんと夜明け前から動いているよ」という驚きを表しているのがここでの「まだ」です。「予想が裏切られる」、「意外性を表す」言葉になっています。どうしてこんな意味の変化が起きているのでしょう?

 

どうやら「まだ」の持つ「ある状態がずっと続いている」という意味にはもう少し奥深いイメージがありそうです。

 

①「圧力がだんだん高まる」

「まだ宿題をやっていない」と「あいつまだ寝てるよ」という表現を見ていると、そこには「圧力がだんだん高まっていく」イメージがありそうです。

宿題をやっていない、というまずい状態が変わらないままずっと続くことによって「やばいよ!」という圧力がどんどん高まっていく。本来起きなきゃいけない時間なのに実際には寝ている、というまずい状態が続くことも同様、「やばい」圧力がだんだん高まります。「まだかよ!」と苛立ち、ついには「いい加減にしろよ!」となるわけです。

 

②「時が止まり、静止するイメージ」

同じ状態が続くということは「事態が変わらない」、つまり「時が止まる」イメージを出します。これは英語で「まだ・いまだに」を意味するstillにも言えることで、stillが形容詞で「静止した、じっと動かない」という意味を出したり、名詞で「静止画像」「映画宣伝用のスチール写真(つまり静止画像。スチールはstillのなまったもの。)」という意味がでるのはこのせいだと考えられます。

 

さて、日本語の「まだ」に話を戻しましょう。なぜ「まだ夜も明けないうちから」という言い方が出てくるのか。

これは、「まだ」の基本意味の「状態が続く」というところから、「=同じ状態が続く=静止」というところが取り出されて使われているのだと考えられます。次の会話を見てください。

 

「おい、誰か来たぜ?もう朝なのか?」

「何言ってんだい、外はまだ真っ暗だ。夜が明けていないのに誰かが来やがった。」

 

この感覚が「まだ夜も明けないうちから」の感覚でしょう。「朝かと思ったらまだ夜だった」というのは、事態が朝へと変化せず、夜のまま止まってしまっている、という感覚です。つまり「まだ夜も明けないうちから」の「まだ」には「動いていると思い込んでいるものが、実は止まっている」ということ感じる「意外性」が表れているのだと言えます。

これと同じ意味の拡張もまた、英語のstillに見られます。大学受験などの長文リーディングで体験された方も多いと思いますが、stillを接続詞的に使う時、「しかし」とか「それでも」という逆説の意味がでます。

 

She turned down his marriage proposal twice. Still, he didn't give up.

「彼女は彼のプロポーズを2度断ったが、それでも彼は諦めなかった。」(ウィズダム英和辞典)

 

この逆説も「事態が動かないことへの驚き」を表しています。2度も断られたならあきらめる方へ事態が動く・変わる、ということが普通なのに、実際には変わらず結婚の意思をあきらめなかった(事態が動かないままだった)、ということに驚きを感じているわけです。

 

ここまでのお話を一旦まとめます。ポイントは三つです。

 

  • 「まだ」の基本意味は「ずっと同じ状態が変わらず続くこと」
  • しかしその奥には①「まずい状態が続くことで圧力が高まる(我慢の限界が近づく)」②「同じ状態が続くところから時間が止まる・静止のイメージが出る」
  • そして「事態が動くかと思ったら実は変わらない、という『意外な気持ち』」の意味が出てくる

(次回に続きます!)

 

 

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