「こっちへ来てから変なんだ。」



レイコがどういう表情をしているのか確認をしないまま、話を続ける。



ベンチに垂直においた手のひらも、汗ばんできたのを感じる。



「変って・・・なにが?さっき言ってた、家族と関係あること?」



さっきから必死に探していた扉を開いてくれた、そんな気がした。




それから僕は堰を切ったように話し始めた。



母親との関係。



姉との関係。



大学に入ってから変わったことに、実家に帰って気づいたこと。



うん、うん、そうなんだ。



間がよく入る相槌とともに、一通り話すことができて、解決はしていないはずなのになんともいえない爽快感があった。



「このこと話したの、レイコが初めてだよ。」



ありがとう、とまっすぐ感謝を伝えた。



レイコはやさしく微笑んで、うんうん、と言いながら小さく首を振った。



「つらかったよね。話してくれてありがとう。」



斜め下を向き、気づいたら思いっきり抱きしめていた。



ちょっと、人いっぱいいるから!というレイコのあわてたかすれ声で、体を離した。



「ごめん、うれしくて。」



頭をひと掻きして、また冷静さを装う。



「大丈夫だよ。さっきの話でひとつ思ったんだけど、いいかな?」



なに?僕は答える。



「ユウジのお母さんって、ネグレクトじゃない?」



ネグレクト・・・その言葉を聞いた途端、顔が熱くなっていくのを感じた。