アパートから学校までの短い道のりを、一歩ずつゆっくりと歩く。



通りの木々は色づき、朝焼けの風が肌を冷やすくらいになった。



僕は、授業やバイトが生活の中心の、大学生くさい日常を1日1日こなしていた。



枕が似合う学生が群がる掲示板を、今朝ものぞく。



たいした用はなかったかと立ち去ろうとしたとき、1番右の掲示板の右下におとなしそうに貼られたA4のチラシが目にとまった。



「頑張っているあなた、一休みしませんか?」



学外の講師を招いた心理学の講演会で、日付があさってだった。



なんとなく、レイコに誘いのメールをした。






付き合っているのか分からない、レイコからそう言われて3週間が経っていた。



確かに僕らは、「普通の」大学生がすることをしていなかった。



でも今の僕にとってそれは重要なことでないし、僕のぼやけた未来にレイコがいる確証がないのなら、傷の舐めあいのような付き合いはしたくなかった。



女はすぐに理由を求めたがる。



最近ショウタがぼやいていた一言が浮かんでにやついた僕に、レイコはしばらく連絡しないからと言った。






講堂の前に、哀愁という言葉がピッタリの表情でレイコは現れた。



僕をちらっと見て、足元に落とす。



講演の120分はあっという間に過ぎ、僕らは始めの場所にいた。



「なんでもできる人ほど、自分の悪いところを隠そうとするので、肩をこってしまいます。」



「頑張ったあとは、一休み。失敗しても、大丈夫。長ーく先を見て。」



「つらいときは、1番頼れる人に助けを求める。助けてくれた人には感謝の気持ちを口に出して伝える。頼るという、小さな一歩を踏み出しましょう。」



何か話したそうなレイコと別れて、壇上から響いた言葉が頭の中をめぐる。



僕は、大切なことに、やっと気がついた。