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福島第一原子力発電所の事故についての解説と自分でできる対応策 その11(終)

さて、原子炉から放射性物質が外に出てくる方ばかり見てきましたが
増えるばかりでなく減ることもあります。
今度は出てきてしまった放射性物質がどうやって減っていくのかを見てみましょう。




放射性物質の半減期(はんげんき)について


放射性物質が放射線を出すときは
放射性崩壊(ほうしゃせいほうかい)が起きているのだということは前にご説明しました。
放射性物質が脱皮(だっぴ)をするんでしたね。

放射性物質は安定した形になりたいので脱皮をします。
なので「脱皮をしてできた物質は安定している」と言いたいところなのですが
実際には脱皮したのにまだ不安定な元素だったりすることもあります。

「脱皮をしたけど不安定な元素」はまた脱皮をします。
最終的にすべての元素が「安定した元素になる」まで脱皮が繰り返されるわけです。

そして、もともとあった放射性物質が
すべて「安定した元素」になったら
もう脱皮が起きないので放射線も出ないというわけです。
つまり

 放射性物質が減る = 放射線を出した

ということなんですね。


この脱皮は放射線物質が生まれたばかりの時に起きやすく
時間が経つほどに脱皮が起きにくくなっていきます。
グラフにするとこんな感じです。


$うつ病に立ち向かうブログ-汚染範囲


そして放射性物質のうちの半分が脱皮するまでの時間を
「半減期(はんげんき)」といいます。

仮に核分裂でAという元素が100個生まれたとします。
このAという元素100個のうちの
半分(50個)が脱皮をするまでに10日かかったら、
Aという元素の「半減期(はんげんき)」は10日ということですね。

注意が必要なのが、
100個から50個になるまでに10日かかるとしたら
20日で100個すべてが脱皮するわけではないということです。
なぜなら時間がたつほど脱皮が起きづらくなるからですね。
だから20日の時点では半分の半分(25個)が脱皮せずに残っていることになります。

この半減期ですが、
半分になるまでにかかる時間は放射性物質の種類によって違います。
つまり放射性物質によって脱皮しやすさが違うということですね。

この半減期という数値が小さければ小さいほど
半分になるまでにかかる時間が短いので激しく脱皮をしていることになります。
そして激しく脱皮をするということは激しく放射線が出るということです。

ですから
・「半減期」が短い放射性物質ほど激しく放射線を出し早く減る。
・「半減期」が長い放射性物質ほどゆっくり放射線を出すけど長く残る。
ということです。



さて、
放射性物質は「生まれたてほど放射線が激しい」というのはご説明しました。
では放射性物質が生まれたのはいつでしょう。
核分裂反応が起きたときですね。

ということは核分裂反応でできた放射性物質の誕生日は
3月11日以前ということになります。
それ以降は制御棒が入ってほとんど核分裂がおきていないからですね。



ヨウ素の半減期


テレビでよく目にするヨウ素131という元素の半減期は8.1日です。
3月11日から1か月以上経っていますから
もともとあった量の16分の1ぐらいまで減っていることになります。
減るのが早くて、激しく放射線を出すタイプだということですね。

ヨウ素131が脱皮してできるのは、
キセノン131という安定した元素ですので脱皮が繰り返されることはありません。
ということは1ヶ月でヨウ素の影響は16分の1まで減ってきているということですね。
3ヶ月も経てば1000分の1ぐらいの影響まで減ります。

問題なのは、
いまだに原子炉からどんどんヨウ素が出てきていることなのです。
もちろん原子炉の中のヨウ素も16分の1まで減っているんですが、
もともとの量がすごい大量なので、今だに脱皮する前のヨウ素がたくさん残っています。
そしてその脱皮前のヨウ素がまだまだ原子炉から外に出てきているわけです。

とはいえ、燃料が前より熱くなくなってきたので
気体となって空をただよって落ちてくるヨウ素の数は減ってきています。
水道水を乳児に飲ませないように報道していたころよりは
ヨウ素が人体に与える影響はだいぶ少なくなったといえるでしょう。

今よりも水道や野菜にヨウ素が増える可能性があるのは
再臨界や水蒸気爆発などが起きた場合です。

再臨界が起こればまた核分裂生成物が増えてしまうわけですし、
爆発が起これば遠くまで飛んでくる可能性が出てくるからですね。
再臨界したか、水蒸気爆発したかというのはこういうところで重要な情報となってくるわけです。
こまめにニュースをチェックするようにしましょう。



セシウムの半減期


さて今度はセシウムについてですが
一言でセシウムといっても実は2種類の元素が出てきています。
セシウム137という元素(半減期30年)と
セシウム134という元素(半減期2年)です。

セシウムはどちらの元素も一回放射線を出してしまえば安定な元素になることがわかっています。
ですが、半減期が長いのでヨウ素のようにすぐになくなるというものではありません。
逆をいえばヨウ素ほど放射線を激しく出さないということも言えるわけです。

つまり一度降ってきてしまえば
長い期間低い量の放射線を受け続けることになるわけです。
今後はヨウ素よりもこのセシウムの方に注意をしておいた方がいいでしょう。


半減期については理解してもらえたと思いますので
いよいよ内部被ばくについて見ていきましょう。




内部被ばくの種類



放射性物質が身体の中に入ってくるのが「内部被ばく」だとお話しました。
内部被ばくには2つの種類があります。

・息をしたときに放射性物質を吸い込んだ場合
・食品に含まれた放射性物質を食べた場合

一つずつ見ていきましょう。



吸引被曝(きゅういんひばく)

空気中をただよっている放射性物質を吸い込んでしまうことを
吸引被曝(きゅういんひばく)と言います。

この場合、放射性物質は酸素といっしょに肺(はい)に送られるわけです。
肺に放射性物質がたまって、そこから放射線が出ますので
肺がんなどへの影響が強いと言われています。

この吸引被ばくをさけるためには
外出時にはマスクをして出かけるようにしましょう。
空気中の放射性物質をすべてマスクで止めることはできませんが
それでも塵(ちり)と一緒に飛んでいるようなものはかなりカットすることができます。


経口被曝(けいこうひばく)

食品の中に放射性物質が含まれていて
その食品を食べてしまうことを「経口被曝(けいこうひばく)」と言います。

経口被ばくについて考えるまえに
まず、人間が食べ物を食べたとき
人間の体の中では何が起きているかを考えてみましょう。

まず最初に食べた物をバラバラにします。
そのバラバラにしたものを体の部品として使います。
部品として使わないものはそのまま外に出てきます。

もちろん放射性物質も同じ道を通ります。
つまり「身体の部品として使われる」か「そのまま出てくる」ということです。

「そのまま出てくる」ほうは簡単です。
普通にトイレで流れていってしまうわけです。
1日から2日もあれば外に出て行ってくれるわけですね。

では「身体の部品として使われた場合」はどうでしょう。
たとえば、
肌の部品として使われたとしましょう。
その場合、その肌が垢(あか)となって出て行くまで
その放射性物質は体内に残っているわけです。
だから身体の中に取り込まれやすい物質ほど危ないということですね。

テレビでよく名前をきくヨウ素やセシウムは
身体に入ったときに部品として使われやすいので
健康への影響が心配されているわけです。

放射性物質の種類にによって身体のどの部分に使われるのかは違います。
そして、どこの部品に使われるかによって
身体の外に出てくるまでの時間が変わってしまいます。

いったん身体の中の部品として使われた放射性物質のうちの半分が
新陳代謝(しんちんたいしゃ)によって外に出てくるまでの時間を
生物学的半減期(せいぶつがくてきはんげんき)と言います。

ちょっとややこしいですが
半減期は放射性物質が半分脱皮するまでの時間
生物学的半減期は身体から半分出てくるまでの時間
と覚えておきましょう。

それでは
主に影響のある元素が身体の中のどこの部品になるか知っておきましょう。

ヨウ素      甲状腺(こうじょうせん)
セシウム     筋肉
ストロンチウム  骨   


一つずつ見ていきましょう。


ヨウ素

ヨウ素が甲状腺に取り込まれると生物学的半減期が120日です。
身体の中から半分出てくるのに4か月以上かかるわけですね。

でもヨウ素の半減期は短いためにどんどん脱皮して放射線を出します。
だから甲状腺に入ってしまったヨウ素は
身体から出る前にそのほとんどが放射線を出してしまうということです。
身体の中でたくさんの放射線を浴びることになるのでとても影響が強いわけです。

チェルノブイリでは
汚染された地域の牛乳からの被害が特に大きかったと言われています。
その他にも海藻(かいそう)などにもたくさん含まれています。
今回の事故では海にも相当量の放射性物質が流れ込んでいますので
こうした放射性物質を海藻がとりこむことも考えられます。


セシウム

セシウムは体内に入ってもそれほど影響が強くないと考えられています。
セシウムの生物学的半減期は90日~100日ぐらいです。
わりと早く身体の中から出てきてくれるうえに
セシウム自体がそれほどひんぱんに放射線を出さないので
ヨウ素などにくらべれば影響が弱いと考えられています。

ヨウ素は甲状腺という一部にたまりやすいわけですが
セシウムは筋肉にたまりやすい性質なので
一部分だけで放射線量が高くなることもないのもありがたいですね。

ただし、筋肉の中にたまりやすい物質なので
牛肉や魚肉などから人体に入ってきやすいともいえます。


ストロンチウム

最後にストロンチウムです。
この名前は聞いたことがないかもしれませんが
実は一番やっかいだと言われている放射性物質です。
4月13日のニュースで少量ですが検出されたと報じられています。

この元素はカルシウムに非常に似ていて
身体に入ってくると、カルシウムと勘違いをされて骨の部品として使われます。
骨の部品として使われるとなかなか外に出てきません。
生物学的半減期は50年と言われています。
ですから一度取り込んでしまえば非常に長い間放射線を浴び続けることになるわけです。

骨という場所も非常に悪い部分です。
骨肉腫(こつにくしゅ)といった骨のガンや、
骨髄液(こつずいえき)のガンである白血病(はっけつびょう)の原因となると考えられています。

さらにストロンチウムの悪いところがあります。
ストロンチウムが脱皮してできた物質は不安定な元素なのです。
安定するためにもう一回脱皮しなければなりません。
つまりセシウムやヨウ素と違って2回放射線を出すということです。

このストロンチウムは気体になりづらい物質なので
土壌から見つかったのは少量でした。
しかし非常に水に溶けやすい物質なので
海に流れ込んだ水には大量に含まれている可能性もあります。

魚などの骨にため込まれると考えられますので
小魚などを丸ごと食べたりすると人体にも取り込まれてしまう可能性があります。


その他の放射性物質

上の3つの放射性物質以外の物質ももちろん体内に入ってくる可能性はあります。
ですが出てくる量や人体への影響が上の3つより少ないので
それほど気にしなくてもよいでしょう。



生物濃縮(せいぶつのうしゅく)について

食物連鎖(しょくもつれんさ)という言葉がありますね。
海の中だったら
プランクトン → 小魚 → アジ → マグロ 
といった感じで食べられていくわけです。

先日、小女子(コウナゴ)という小魚から
放射性物質が出て出荷停止になったわけですが
このコウナゴを食べる魚がいれば、
その魚には放射性物質が溜まっていくわけです。

このようにエサを食べることによって
そのエサに入っていた放射性物質がたまっていくことを
「生物濃縮(せいぶつのうしゅく)」と言います。

もちろん海だけではありません。
土壌の汚染でも同じように広がります。
土壌に放射性物質が落ちて、それを吸い上げた草をウシが食べて
牛乳から放射性物質がたくさん出てくることもあるわけです。

生物濃縮の問題点は食物連鎖の頂点にいる動物ほど汚染が強くなるということです。
この生物濃縮が放射性物質でも起きるのかは確実にはわかっていません。
水産庁などはセシウムにおいて生物濃縮は起こらないとしていますが
http://www.jfa.maff.go.jp/j/kakou/Q_A/pdf/110331suisan.pdf

水産資源管理の専門家である勝川俊雄・三重大学准教授は
海水の50倍の濃縮が起こるとしています。

そもそも放射性物質の海洋汚染がこれほどの規模で起きたのは例がありません。
チェルノブイリなどの事故でも海がそばになかったので
今回のように直接海に流れ込むようなことは起きていません。

政府の発表ではチェルノブイリの10分の1の量の放射性物質が出ていると発表していますが
これは空気中への拡散についてのみです。
どれだけの量が海に流れたのかは発表されていません。
気体になりにくくて原子炉の外まで出てこないような物質も
水に溶けて海に流れ込んでいる可能性がありますので今後も海水の汚染に関しては注意が必要です。


魚には長い距離を泳ぎ回る回遊性(かいゆうせい)の魚と
その土地で一生を過ごす定住性(ていじゅうせい)の魚の2種類がいます。

回遊性の魚は移動して原発付近を通ることもありますし
その土地の魚をエサとして食べますので絶対安全とは言い切れません。
リスクを極力避けたいということであれば、
ヒラメ、カレイのような定住性の魚で福島以外の地域のものをお勧めします。



最後に


国や県ではこうした放射性物質が食品に含まれていないかを
きちんとチェックするようにしています。

野菜の表面に付いた放射性物質から出る放射線は
ガイガーカウンターという機械をかざせばかなり正確に測れます。

しかし牛肉やマグロといった食品の場合、肉や骨の中に取り込まれてしまったら
外側から機械をかざしただけでは測れない放射線もあります。
放射線は種類によって透過力(とうかりょく)が違うからですね。
ものすごい精密な検査をしなければどの程度含まれているのかもわからないのです。

「厚生労働省は各自治体に
野菜を水で洗ってから放射線量を測るように指示をした」そうです。
もともとのマニュアルでは水洗いせずに放射線量を測ることになっているそうです。
これは東大病院放射線治療チームがtwitterにて公表しています。
政府はなるべく被害を小さく見せたいということでしょう。

先ほども言いましたが放射線量を測る機械は
表面についた放射性物質からの放射線は正確に測れます。
水洗いをしてから測ったのではあまり意味をなさないわけです。

こうした事実も踏まえると
できることなら
「放射性物質が検出された地域の食品はさけたほうがいい」
と言わざるをえません。

以前よりも放射線量はあがったけど健康に影響はない範囲だから
野菜や魚を買わないのは風評被害(ふうひょうひがい)だと言う人もいます。
しかし以前より上がっているのは間違いないのです。
それは風評(ふうひょう)とは言いません。

重要なのは
低線量とはいえ以前よりもずっと高くなっている放射線量が
人体に影響があるのか、ないのかです。
そして、
「健康には100%影響がない」という専門家の意見の一致がない限り
それは食べるべきではないのです。

食べてほしいのだったら
政府がデータを示して「100%絶対に安全だ」言い切ればいいのです。
それができないのであれば
政府が代わりの食糧を輸入して農家には補償金を払うしかないのです。

食品に限らず、
消費者には商品を選ぶ権利があります。
「少しでも良い物を安く買いたい」
それでいいのです。


枝野官房長官がよく使う
「ただちに健康に影響はありません」という言葉。

裁判などで国と争うことになった場合
「ただちに」という言葉が表すのは「その瞬間」という意味です。
長くても「1日以内」という解釈でとらえられます。
2日後に影響が出て国を訴えたとしても裁判では負けてしまうそうです。

国の言い分をわかりやすく直すと
「その日のうちに影響はでません」という意味です。
こんなことを言っている政府が
風評被害だから野菜や魚を買えというのはおかしな話なのです。


前にもいったように
低い放射線量での人体への影響については科学者によって意見が割れています。
そして、政府や東京電力からしたら
「人体への影響がない」という専門家の意見を取り入れた方が
楽だしお金もかからないわけです。

放射線から人体に与える影響というのはすぐに出てくるものではありません。
もし10年後にガンになっている人が増えていたとしても
政府は認めないでしょう。

こうしたことは自分で判断するしかありません。
過去にもたくさんの公害問題や、アスベスト、血液製剤の問題など
国はたくさんの間違いをおかしてきました。
後から問題に気付いても健康はかえってこないわけです。



政府が安全だから食べてもよいとしている
暫定基準値(ざんていきじゅんち)ギリギリの量を食べて
どのぐらい被ばくするのかを計算した例があります。

食品と飲料から受ける放射線の影響の最大値が
およそ年間25mSv(ミリシーベルト)
これに空気中の放射性物質の影響を足したものが
政府が大丈夫だと言っている数値だということですね。

政府の暫定基準値の計算の根拠は100mSv以下ではまったく影響がでないという
科学者の意見を参考にしているからこのような数値になるわけですね。
そしてこの説には反対している科学者もたくさんいます。
どちらかわからないなら安全な方を選んでおきたいものですね。



今回で原発関連の記事は終わりになります。
時間がかかってしまいましたが少しでもお役に立つ情報が伝えられたならうれしいです。
コメントやメッセージへのお返事はこれから時間をとりますのでお待ちください。
わからない点などありましたらコメントやメッセージでご質問ください。


ブログに関してはしばらく更新をお休みします。
よろしくお願いいたします。