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<航空券>

オフシーズン(1~3月)3万円~
オンシーズン(4~12月) 6万円~

 上記は、よく旅行会社の広告やWEBサイトに書かれている“成田~ニューヨーク”の往復航空券の値段である。

 以外と安いと思いきや、これにオイルチャージなるふざけた物が加算される。現時点(2010年8月)だと3~4万円と、航空券代と大して変わらない額だ。これは石油の価格が下がれば安くなる(無くなる)ものだが、当面無くなることはないと思われる。

 仮にオイルチャージ額が変わる場合、航空会社はその時期に航空券の金額を調整する。オイルチャージが上がれば、航空券代を下げるし、逆なら航空券代を上げる。なぜそんなことをするかというと、変更の前後の日で客の数の差が激しいと、なにかとトラブルが多いからだろう。

 ようするに、オイルチャージが変わろうが、トータル金額はあまり変わらないのだ。つまり正確な航空券代はこうだ。

オフシーズン(1~3月)7万円~
オンシーズン(5、7~9月、12月) 10万円~

 購入は、HIS、SKYGATE、等の格安旅行代理店、もしくは“ニューヨーク 格安航空券”でネット検索してもいいだろう。
 経験上、小さな代理店のほうが、掘り出し物があることがある。がしかし、安い航空券なりに、乗り継ぎ便だったり、到着(出発)時間が悪かったりと、短期間のツアーの場合は疲れが増えるだけなので、あまりお勧めはしない。



<NY市内の交通>

 最もリーズナブルで利便性もあるのは地下鉄だ。

 NYは面積のわりに駅の数が多いので、どのライブハウス(観光地)に行くにも非常に便利だ。さらに、メトロカード(切符の代わり)の買い方さえマスターしてしまえば、英語をしゃべらなくてもいいという利点もある。
 一週間以上の滞在であれば、お徳な乗り放題カードもあるので利用するといい。かなり割安だった記憶がある。

 メトロカードの買い方や地下鉄の乗り方については、ガイド本に書いてあるのであえてここでは書きません。


 一般の旅行者と皆さんの違いが一点ある。

 それは楽器を持っての移動が伴うということだ。しかもそれらは重いハードケースに包まれている。宿~地下鉄駅、地下鉄駅~ライブハウス を歩くだけでもかなり疲れるという方もいるだろう。

 その場合は迷わずタクシーを使おう。NYのタクシーは日本に比べて値段が安い。初乗り料金は3$(夜間等の割増有り)、メーター式で料金が加算されていく。しかも日本の都市部とは違い、NYの道は碁盤の目式と非常にシンプルな作りとなっているので、距離のわりに早く着く。しかも何人乗っても料金は変わらないので、地下鉄よりも割安になるケースも多い。

 乗り方だって簡単だ。NYを舞台とした映画でもわかるように町中に黄色い車が走っているので、手を上げればすぐに止まってくれる。難しい英語も必要ない。行き先のみ「○○ストリート、アンド、△△アヴェニュー」と住所を告げればよい。ちなみに日本のタクシーのようにカーナビは付いてないので細かい番地とか店の名前を言っても対応不可と思ったほうがいい。


 以上はマンハッタン(NY中心部)の話。一般の旅行者はそれでいい。がそんなアナタはミュージシャン。少しばかり話が違う。
 なぜなら、皆さんがライブをやる店がマンハッタンにあるとは限らないからだ。イーストリバーを越えたブルックリンにもかなりの数のライブハウスがあるのである。

 宿がどこかにもよるが、基本、マンハッタンでつかまえたタクシーの運転手にブルックリンのどこそこまでと伝えるにはそこそこの英語力と土地勘が必要だ。「○○ストリートうんぬん」で通じるのはあくまでのマンハッタン内の話。マンハッタン以外となると相当有名な通りとかわかりやすい目印が必要となる。運ちゃんに「大体はわかるけど近くなったらナビしてくれよ」とか言われたり、「オレはマンハッタンから出ないよ」と乗車拒否されたなんて話も聞いたことがある。

 だから、ライブハウスがマンハッタン以外のときは地下鉄を使ったほうが無難だと思う。マンハッタン外とはいってもブルックリンは川を挟んでの隣なので、地下鉄駅で1つ2つの差、時間も数分だ。しかもライブハウスは大体が繁華街にあるので、もよりの駅から15分以上歩くということはまずないし、近くに駅がないということもないだろう。

 ちなみにNYの地下鉄は24時間走っている。深夜は本数が少ないが、特別治安が悪いということもない。(日本同様、酔っ払いはそれなりにいる)



<マンハッタンの住所について>

 マンハッタンの住所は非常にわかりやすい。街は碁盤の目のようになっており、地図でいうと縦に走る通りごとに区画をわけて、それを何番アヴェニューと呼ぶ。それに対し横に走る通りごとにわけたものを○○ストリートと呼ぶ。

 タクシーの運ちゃんは、マンハッタンのアヴェニューとストリートは大体把握しているので、「○○ストリート、アンド、△△アヴェニュー」と言えば、ちょうどそこが交わるコーナーまで連れて行ってくれる。まれにマイナーな通りを運ちゃんがわからないこともあるが、そのときは近くの大き目の通りを言えば大体わかってもらえる。

 この区画の方式は、日本では札幌と京都などが採用している。
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 NYのツアーパック料金は、オフシーズン(1~3月)で一人8万円~、オンシーズン(5~12月)であれば一人15万円~、となかなかお高い。

 前提として、ツアー料金はなるべく安くしたい。

 航空券は基本距離に基づく値段(便が多い少ないという要因もある)なので、仕方ないが、他の国に比べてNY(特にマンハッタン)のホテルの値段が高いというのが、ツアー料金を高くしている原因である。

 HIS等のツアー詳細を調べても、ホテルの一泊辺りの料金が1万円以下というのはまず目にすることができないし、(あったとしてもかなりの確率で満室となっている)
 仮に安めのホテルのツアーがとれたとしても、部屋は料金なりで、日本のビジネスホテルに毛の生えた程度のものだ。ある程度良い部屋をとるのであれば一人一泊2万円は覚悟したほうがいい。

 などと、以前一人でNYを訪れた際に学んでいたオレは、今回のツアー手配を旅行会社のパックでまかなうつもりは一切なかった。旅行会社の利用は格安航空券の手配のみとし、宿は直接手配すると決めていた。


 ではどうするか?
 NYのホテル紹介のサイトを探し、自分で予約する? いやいやそうでない、それなら航空券と一緒に旅行会社に頼んだほうがいいし、料金もそっちのほうが安い。せいぜいのメリットとしてホテルの選択肢が増えるくらいのものだ。

※日本の旅行会社のツアーパックに組み込まれるホテルは実績(安心感)のあるホテルばかり、現地のホテル予約サイトを調べると安いホテルはかなりある。

 まずオレはホテルに泊まるという概念を捨てた。


 具体的な選択肢は2つ、アパートメントホテルとゲストハウス(Hostel)だ。



 アパートメントホテルとは文字通り、アパートをそのままホテルとして貸し出ししているという物件。
 間取りも様々で、ワンルームからリビング付までと様々。風呂、トイレ、キッチン、冷蔵庫、TV等、生活に必要なものはついている。
 料金は一人当たり6~7000円からと、ホテルよりも格段に割安。デメリットはフロントやホテル系のサービスがないということ。特別なトラブルがない限り、管理者と会うのはチェックイン時とアウト時のみ。宿代はチェックイン時に全額支払う。
 一部屋あたりの宿泊可能人数は1人~4人などとまちまちだが、大体において人数が多いほうが一人あたりの負担額は軽減される。4人用の部屋であれば4人分のベッドは当然ある。日本の狭っ苦しい居住環境を体験している人間であれば十分な広さがあると思って間違いない。



 ゲストハウスは、いわゆるバックパッカー(低予算旅行者も含む)や長期滞在者が主に利用する宿である。
 部屋は様々で、1人1室の個室タイプから1部屋の中にいくつか2段ベッドがあって他の人と同室で寝るドミトリータイプなどがある。
 アパートメントホテルとの違いは、寝室以外にリビングが他の宿泊客との共有スペースとしてある。風呂、トイレ、キッチン、家具類は共同。管理人が同居もしくは近所にいる。など。大体は、2~4LDKの居住用マンションを使用していることが多い。(リビング以外の部屋を個室、もしくは共用の寝室としている)
 デメリットは他の旅行者と一緒に生活する部分が出てくること。しかしながらそれは旅の醍醐味とも言える。ホテルの旅行だと有り得ない出会いがあるのは間違いないだろう。
 料金は共有するものが多いことから、アパートメントホテルよりも安い。ドミトリータイプであれば、一泊20$~、個室タイプであれば30$~となる。バンドで利用する場合、ある程度の人数で泊まるわけだから、タイミング次第では実質貸切り状態なんてことにもなるかもしれない。



 ホテルがいいのか、こういったリーズナブルな宿がいいのか、人により趣味は異なるだろう。個人的な意見を言えばオレはあまりホテルというものが好きじゃない。なんとなく寝室に箱詰めにされているようでくつろげないのだ。例え共有でもいいからリビングで他の旅行者らとくだらない話をしているほうがよっぽど旅らしいと思う。

 オレたち4人はアパートメントホテルを利用した。1室が2名タイプのものだったので、2室をネットで予約した。
 それはイーストビレッジにあり、外から見ればホテルだなんて看板はひとつもない一介の居住用アパート。オレたちはそこの2階と3階の1室ずつを借りた。ベッドはロフトとソファーベッドがひとつずつ、間取りは日本での1LDKといったところ、2人で泊まるには十分過ぎる広さだった。



 ここではあえて、お勧めの宿の紹介はしないことにする。なぜなら、NYにはかなりの数のこういった宿が存在しているし、その中でもオレが泊まったことがあるのはごく一部であるため、本当の意味でのお勧めの宿は知らないからだ。

 宿を探すのは簡単だ。日本語で、“ニューヨーク、NY、アパートメントホテル、ゲストハウス”などを組み合わせてネット検索すれば、いろいろと出てくる。
 日本語で検索して出てきただけにほとんどが日本語のサイトだ。これらはメールでの問合せが日本語可能であったり、現地の管理人も日本語が通じたりとなにかと便利である。実際、NYに住んでいる日本人が経営しているという宿もかなりある。
 逆に日本人経営を避けたいのであれば、日本語ではなく英語で“NY hostel”で検索するとよい。ただしこの場合はほぼ英語のサイトとなるので注意。しかしながら宿の選択肢はかなり広がるという利点もある。
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 日本のライブハウスにはチケットノルマという制度がある。

 音楽をやっていない人のために説明すると、日本のライブハウスのステージに立っているミュージシャンは、お店からチケットを20枚とか30枚とか(金額と枚数は店の規模と知名度などによる)の購入を義務付けられている場合がほとんどだ。

 ミュージシャンはそのチケットを自ら手売りして客を呼ぶという仕組みなのだが。裏を返せば、客はゼロでもお店側の最低限の収入は保証されているというなんとも都合の良いシステムである。

 ミュージシャン諸君。耳をダンボにして聞いて頂きたい。


 これは、日本独自のシステムだ。


 一応、これはオレの知る限りということになるのだが、少なくともアメリカのライブハウスの人間に「チケットノルマはいくらですか?」と聞けば、「それって何?」と言われるのは確実だ。

 信じられない人もいるかもしれないが間違いない。なぜならオレたちはライブをやった2件の店には払ってないし、そもそもメール交渉の時点でそんな話は一切出てこない。(あえてこっちからも聞かなかった)

 ここを読んでNYライブをやろうと思っている人は、店の人に「ノルマ」のことは言わないようにしましょう。「お、そのシステムいいね……」ということになり、広まってしまえば、アナタはアメリカ中のミュージシャンに狙われることになるかもしれない。

 が反面、いくら客が入ってもバックはない。

 ※日本のライブハウスは、ノルマ枚数を越える集客があったとき、チケット料金の何割かずつをミュージシャンにバックする。

 なので、アナタたちのツアーの予算にチケット代というのは含まなくてよい。というか、NYのインディーバンドのライブハウスにチケットというもの自体が存在しない。店の前でチャージ(5~10$)をドアマンに払えば、手にスタンプを押されて「はい、どうぞ」って感じなのだ。

※注1 店を貸しきってイベント等を企画する場合はお金の交渉が必要でしょう。
※注2 メジャーアーティストやインディーでもかなり集客のあるバンドのライブではチケットがあります。



<なぜ日本はチケットノルマ制なのか?>

 NYのライブハウスのチャージは5$から10$(約500円~1000円)といったところ、15$以上だとそこそこ集客のあるアーティストだ。

 それに対し日本は1000円~2500円、差は明白である。

 例えば7~8$(実際、これくらいのところが多い)なら、目当てのアーティストがいなくとも、ある程度ライブハウスのカラーがわかっていれば軽い気持ちで入ることが出来るだろう。
 一方、日本だとそうはいかない。どんなヤツが演奏してるかもわからないのに1500円とか2000円払うのはあまりにもリスクが高い。一見の客がほとんどいない。それが日本のライブハウスの実状だ。

 最初、オレは日本(東京)の店の家賃が高いからか?と考えたが、そうではない。NYも東京と同等、いやそれ以上に家賃は高いし、日本の地方のライブハウスでもチケットが700~800円というところはまれだろう。

 日本のライブハウス業界は良くないループの上に成り立っている。

チャージが高い → 客が入らない → 店が運営出来ない → ノルマ制にするしかない

という図式だ。アメリカはこの逆、チャージが安いから客が入り、それで運営が成り立つ。

 かといって日本のライブハウスが勇気をだしてチャージをNY並みに下げたとしよう。
 店の運営は成り立つか?

 個人的な見解だが、「運営は成り立たない」と思う。

 理由は2つ、

 1.日本人はアメリカ人ほど酒を飲まない。(飲めない)
 2.日本人の音楽嗜好はメディアに頼る比重が高い。

 1はアメリカのBARやライブハウスに一歩でも足を踏み入れれば一目瞭然。男も女も飲むわ飲むわ食うわ食うわ、そりゃ太るよってこっちの具合が悪くなりそうになる。
 アメリカのライブハウスはBARやレストランを兼ねているところが多い。店の奥がライブスペースで、もれる演奏の音をBGMとして食事を楽しむことが出来る。もちろん食事やBARだけの利用客も大勢いる。演奏を見たい人は「ライブスペース前のドアマンにお金払ってね」というシステム。店の収益はライブチャージだけに頼らなくてもよいのだ。

 2については異論がある方もいるかもしれない。当初のオレの考えは、単純に「アメリカ人は日本人より音楽が好き」というものだったが、今ではそうではないと思っている。日本人だって音楽は好きである。街中にあらゆる音楽が24時間流れてるし、これほど外出時のヘッドフォン使用率が高い国民は他にいない。

 例えば、日本人は生の演奏を軽い気持ちで見る(演奏する)機会があまりなかったのだと思う。今でこそ駅前などに弾き語りのミュージシャンを目にするが、不快に思った人が通報すればすぐに警察が止めにくる。
 土地の狭さの問題もあるだろう。家で演奏しても隣人に怒られる。スタジオ代もバカにならない。自己表現にはお金がかかる。

 生の音楽に触れる機会が少ないのだから、必然とメディアの影響の率が上がる。新しい発見は常にTV、ラジオから、自分から店に足を運んでいろんなアーティストを発掘するなんて思いもつかない。生演奏のパワーを知らない。ライブは良く知っているアーティストのみ、たまに高いお金を払って見に行くものという図式が出来上がっている。


 オレと同じ考えに至ってる人は多いと思う。いやきっとこれに立ち向かうべく今現在も戦っている偉人は少なくないだろう。
 しかしながら、オレの目の前には今のところ成功例は現れていない。それほどに国民に根ざしている文化というのはやっかいなものだ。

 もし宝くじで3億当たったら(こんな話をしてるのは、子供か酔っ払いくらいだ)オレはNY式のライブハウスを作りたい。

 赤字経営は必死なのだろうが。