慈雨 [ 柚月 裕子 ] |
ちょうど映画の方の「孤狼の血」が、日本アカデミー賞で主演男優賞と助演男優賞を受賞していましたが、「孤狼の血」の柚月裕子が2016年に発表した「慈雨」をようやくブックオフの古本200円で入手できた。今現在はまだ文庫化はされていない模様。ちなみに2016年末発表、2017年版“このミステリーがすごい”ではランク外“22位以下の作品(20点以上)”のところにタイトルが書かれていた(獲得得点は28点…この年の1位「涙香迷宮」は129点)。定年退職した元刑事が妻と一緒にお遍路を行っている時に、古巣の警察で幼女殺害事件が発生。その手口が、かつて自分が手掛け、既に解決した事件にソックリだったことから、事件が気になりはじめ、後輩の刑事に連絡を取り、自分もお遍路を続けながら、オブザーバーのような立場で色々と助言を与える。実は、過去の事件にも色々と秘密があり、それが少なからずお遍路を思い立つきっかけにも繋がっていた。主人公の刑事は…現在、過去の事件以外にも、お遍路の行程で自分の警察官人生を振り返る。正直言って…お遍路の旅をしている描写が多く、主人公の人となりを知るための過去のエピソードも、それほど本筋(メイン事件)には関わってこなかったり、前半はかなり退屈でしたね。もたもたした割に、後半はあれよあれよという間に、犯人逮捕までいくついてしまう。事件の捜査なんて、きっかけがあれば…という、これもある意味のリアルさなのかもしれないけど。主人公が抱えていたものについては、明確な答えを出さないまま…もし困難が待っていても、立ち向かえるだろうという前向きな気持ちになったところで終了となってしまったので、なんとなく中途半端にも思えた。もう少し“アレ”がどうなったかという結果が読みたかった。あと、数々の事件を解決したベテラン刑事も、身内の気持ちを計り知るのは苦手であると(笑)「孤狼の血」の著者による警察ミステリーとして読んでしまうと、いささか物足りなさがある。幼女殺害という猟奇的な事件を扱ってる割に、陰惨な描写は少な目だったので…ヒューマン系の作品が好きな人の方がより楽しめるかもしれない。