山田村ワルツ(1988年)
テーマ:邦画![山田村ワルツ [DVD]](https://stat.ameba.jp/user_images/20250418/14/eigasuki/7e/04/j/o0136019315568704591.jpg?caw=800)
新作「ゴールド・ボーイ」の初放送に合わせた、WOWOWの金子修介監督特集を追いかけている…今回は、けっこうWOWOW初放送の旧作もいっぱいラインナップされている。この「山田村ワルツ」なんかも初放送だったんだけど、オイラは過去に日本映画専門チャンネルで放送した時の録画ディスクが手元にある…でも、その時に、録っただけで、ちゃんと見なかったんだよな。タイトル自体は公開時から認識していたけど、当時のオイラの琴線にも触れなかったので、ぜんぜん見なかった。昨日鑑賞の「香港パラダイス」同様、後から金子監督作品だと知った。
東北地方にある山田村は…過疎化に悩んでいた。特に若い女の数が少なく、このままでは村の存続にも関わってくる。危惧した村長らは…村の青年団、農協の光一、花火師の貫太郎、僧侶のヤスオ、医師の護のために集団見合いを企画。都会からやって来たラン、スー、ミキと対面させるも、最終的に失敗に終わってしまう。諦めきれない村長は、村に伝わる“おたふく祭り”を復活させ、大規模な集団見合いと結び付けることを思いつくのだが…。一方、スランプに陥った少女作家・綾小路麗花は、次回作の取材を兼ねて山田村を訪れ、光一らと遭遇するが…。
モテない青年団の若者たちが“集団見合い”に挑む顛末を…時にド直球な下ネタで、時にシュールな笑いでコミカルに描きつつ、田舎の過疎化問題に鋭く切り込んだ社会派な面も持ち合わせたりする、なかなかの怪作。いや、けっこう、今の時代に見ると…逆の意味で問題作になったりもするんだけど、まだまだ昭和だった時代の、懐かしさと共に、寛容・寛大な気持ちで作品に向き合いたい。多くの若者たちが、ろくな特産品もない田舎での暮らしに嫌気を出し、都会=東京へと出てしまい、このままでは村の存族危機にもなりかねない状況から物語は始まる…。
村にしがみついてる若者たちには、嫁の来手もなく…本人たちも悶々としていて、業を煮やした親世代が、嫁探しの“集団見合い”を企画する。最初は、若者たちが“一対一”になれるようにと、少人数の都会美女を集めてご対面となったのだが、事を焦りすぎて空回りする田舎民に対し、はなっから“物見遊山”と決め込んでいて、本気で結婚なんて考えていなかった都会美女たちはドン引きしまくり。結果的に見合いは失敗に終わるんだけど…村長以下、村のオッサンたちは第2弾を企画!それが“どんなブスでもいいから、数を集めよう”という作戦だったりする。
そして、“大量のブスが来るかもしれない”という情報を知らされていなかった若者たちが、意気揚々と新たな集団見合いに挑もうとするが…。今の時代じゃ、完全にOUT…作れないだろ、こんな映画。だって、子孫繁栄のためにブスでもいいから連れてこいって話になって、結局、そのブスも拒絶しちゃうって、男目線の身勝手な話だからな(笑)でも、これが“笑いに変えられた、エンタメとして成立してしまった”のが昭和という時代なのよね。もちろん、それだけではなくて…ロマンポルノなどで下積みを経験してきた、金子監督の的確な演出手腕もあってこそだが…。
東京にやって来た田舎の青年団が、ラブホテルにしけこむカップルたちに嫉妬し、石を投げつける描写とかも…一歩間違えれば、ただの犯罪者じゃねーかって感じだけど、笑って見れちゃうから不思議だよな。集団見合いを成功させるために、都会から呼んだ人気バンド“米米CLUB(ホンモノ)”たちの“まるでPVのような”歌唱に合わせて、踊り狂う“仮面をつけたブスたち”はすっかりホラー?いや、あれはスリラーあたりのパロディか?物語の後半…どんどん近代化する村の生活に、青年団が反逆、暴徒化する様は…「時計しかけのオレレンジ」をダブらせる。
そして本作でも、女優陣に対してのストライクゾーンの広さを見せるのが、いかにも金子作品…メインヒロインである田舎に憧れる不思議少女(役どころはスランプ中の天才美少女作家)に小沢なつき!「魔法少女ちゅうかなぱいぱい!」の“ぱいぱい”ですよ!当時アイドルだった小沢なつきを、“田舎の若者が悶々して、ヤリたがる”映画に引きずり込むセンスが最高…後にAV女優にも転身してるし、やはり女優抜擢センスには“先見の明”がありすぎる金子監督(笑)他にも、浜ちゃんの嫁・小川菜摘から大御所・北林谷栄まで女優を可愛らしく、魅力的に撮ってる。
舞台となる山田村(たぶん架空)の唯一の名産品である“ヤマダボチャ”…畑で育ってる巨大な野菜(?)で、まるで“くさや”のような特徴的な匂いもするそうなんだが、とにかくその珍妙な野菜のビジュアル、花を咲かせる描写などがどことなく不気味で…後の平成ガメラシリーズの、卵から孵化するギャオスを彷彿とさせるななんて思うと、あまりにも“金子ファンの深読み・こじつけ”に思われてしまうか(笑)リカちゃん電話のギャグにひときわ懐かしさを覚える、今の人は絶対にわからんだろう。他にも時代を感じるTVネタやCMソングにいちいち反応してしまった。
監督:金子修介
出演:天宮良 小沢なつき 米山善吉 我王銀次 米米CLUB 西川弘志 小川菜摘 北林谷栄 ハナ肇
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