悪の法則 (エクステンデッド・エディション) | 愛すべき映画たちのメソッド☆

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映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ



「ダイヤの価値は、欠点の無さで決まるんだ。」

劇場公開版よりも21分長い138分バージョンで、エロとバイオレンスが大幅に増した完全版。

あらゆる方面への「配慮」により「優等生」な作品ばかりになってしまった昨今の映画界の中で、本作は近年稀に見る「容赦」ない毒々しさが『ファイトクラブ』並に詰まっている。

劇場公開時は賛否両論真っ二つに分かれた本作だが、10年20年たてば恐らく「傑作」の一本として永遠に語り継がれるだろう。

年齢を感じさせないセンス溢れるリドリー・スコット監督、『ノーカントリー』の原作者でもある小説家のコーマック・マッカーシー脚本による骨太なスリラー映画。

イケメンでお金にも女にも不自由しない順風満帆だった人生から一転、些細なキッカケで地獄へと転がり落ちる男の顛末。

これは、本作と同じくペネロペ・クルスとキャメロン・ディアスが共演した『バニラスカイ』とも似たテーマで面白い。

特に、リドリー・スコット監督の前作『プロメテウス』とは正反対の演技を披露するマイケル・ファスベンダーの「弱さ」の表現は必見。

後戻り出来ない深みに落ちていく展開はドキュメンタリーの様に生々しく、ダーレン・アロノフスキー監督の傑作『レクイエム・フォー・ドリーム』の様でとても恐ろしい。

メキシコマフィアの実態とメキシコの凄惨な状況を元に、「善」が勝つのか「悪」が勝つのか判らない現在進行系の「現実社会」がドライに描かれた本作は、人間の運命の様に「結末」が全く予想できず、オープニングからクライマックスまで一瞬たりとも目が離せない。

これはリドリー・スコット監督ならではの「異性人をメキシコ人に置き換えた『エイリアン』リブート」なのかもしれない。

そんなこの世に実際に存在する「闇の奥」を目撃した我々はまるで茂みの中に潜むチーターに睨まれたウサギの様に全く身動き出来なくなる。

今が「幸せ」だという事は「幸せ」な時にはなかなか気づけないもので、全てを失ってから「平凡な毎日の尊さ」に気付いても、もう遅いのだ・・・。

「これは真実よ。真実に温度はないわ。」



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