Mr.3000 | 愛すべき映画たちのメソッド☆

愛すべき映画たちのメソッド☆

映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ



「20年間その台詞待ってたけど、今はどうかな。」

日米通算「4000本安打」を達成したイチローが「最も好きな映画」の一本として挙げている「3000本安打」映画。

栄光に満ちた選手時代を引退した野球選手が、あるキッカケで再びバットを持つ事になるという、いきなり「シリーズ物の最終話」のような設定にまずはニヤけてしまう。

これは野球版『ロッキー・ザ・ファイナル』であり、スーパーヒーローの「その後」を描いた『Mr.インクレディブル』の野球版でもある。

タレントや有名人が本人役で多数登場する点、実在のニュース番組やトーク番組に映画のキャラクターが出演する数々の場面、プロ野球の入団テスト並の難関を突破し1000人の中から選ばれた元野球選手と役者たちが、動きもビジュアルも本当の野球選手にしか見えない点、「実名の球団・スタジアム」「1万人のエキストラの観客」「リーボックのCM」「EA製テレビゲーム」・・・全てにおいて現実とリンクしたリアリティが徹底されている。

名コメディアンであるバーニー・マック演ずるメジャー屈指のスラッガー「スタン・ロス」は、自分の才能に溺れ、ワガママで自己中心的な態度で、チームメイトやマスコミからも嫌われている傲慢な野球選手。

なんと彼は、野球殿堂入りに必要な3000本安打を達成した途端、シーズン途中にも関わらず、さっさと引退してしまいブーイングの嵐を浴びる。

その後、人望の無さから野球殿堂入りを果たせずに月日だけが流れるが「Mr.3000」の愛称をフルに使い、数々のビジネスに成功する。

しかし10年後、公式記録のミスが発覚し、3000本まで「3本」足りていなかった事が発覚する。

彼のヒット数は2997本だったのだ。

「Mr.2997」となってしまった彼は、誰からも歓迎されない中、47歳で現役復帰し「殿堂入り」と「記録」のために、残り3本のヒットを狙うが・・・人生って、本当に素晴らしい。

ある意味「人生の9回裏2アウト」から始まる本作は『メジャーリーグ』以来の傑作ベースボール・コメディだ。

かつて「図に乗っていた人物」が、冷ややかなマスコミや、若手ばかりのチームメイトにバカにされながらも、老いた体にムチを打ち、人生の再スタートをきる。

しかし、「気持ち」と「体力」のギャップは本人が思っている以上に激しく、バッティングセンターで空振りの連続、腕立て伏せですら「5回」と続かない・・・。

人生の栄光からドン底へ落ちた主人公は、どこまで這い上がれるのか。

その軌跡には「夢」と「希望」と「愛」と「人情」と「チャレンジ精神」、そして「笑い」がタップリ詰まっている。

フォークボールだらけの、人生という名のペナントレースは、とても大切な「サイン」を出して導いてくれる誰かにきっと出逢える。

本作は、心のストライクゾーンど真ん中に突き刺さる、直球の「人生賛歌」だ。

「このままだと、お前の引退後の式典に『荒馬』が来てスピーチする事になるぞ。」



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