
「必ずあなたの元へ戻ってきます。例え死んだとしても戻ってきます。生まれ変わってでも、あなたの元へ戻ってきます。」
「ラスト5秒」に胸が締めつけられた。
「静寂」に包まれたその「瞬間」が《永遠》の様に感じられ、あの「表情」に全ての「想い」が込められている気がした。
時空を超えて「過去と現在」を垣間見た我々観客だけが感じられる「愛の連鎖」が溢れる瞬間でもあった。
本作は「特攻」を美化などしていないと心底思う。
この想いを言葉にする事は簡単ではなく、戦争を一言で否定する事も容易ではない。
しかし、ストレートに「戦争の虚しさ」や「生きる事の素晴らしさ」が胸に突き刺さった。
「善と悪」「強さと弱さ」の概念が完全に逆転していた戦時中に、「死にたくない」という想いを貫くという「本当の強さ」を持つことや、「人の幸せ」を第一に考えること。
特攻や戦争などの背景を抜きにしても、「生命」「絆」「約束」「勇気」「愛」に満ちた素晴らしい物語に心を揺さぶれる。
本作は、百田尚樹のベストセラーを、山崎貴監督が映画化した戦争ドラマ。
祖父の歴史を調べる孫の視点から、「海軍一の臆病者」と呼ばれたパイロットの真実の姿を、現代と過去を交錯させながら描いている。
主人公の特攻隊員役に、岡田准一。
現代に生きる孫役に、三浦春馬。
他にも、井上真央・夏八木勲・風吹ジュン・橋爪功・染谷将太・濱田岳など若手からベテランまで多彩な俳優が共演する。
現実のように目の前で繰り広げられる空中戦の恐ろしさ、戦闘機・空母・街並み・戦況に至るまで当時の資料を元に、史実の数々を完全再現した描写、そこへ巧妙に織り込まれた「架空のキャラクター」たち、そして、現代を軸に回想形式で過去の謎を追う展開も含めて『タイタニック』を彷彿とさせる「映画的カタルシス」が全編に詰まっている。
アメリカが最も恐れたのは、「悪魔」と呼ばれた零戦と、たったひとりの「臆病者」だった。
祖母の葬儀の席で会ったことのない実の祖父・宮部久蔵の存在を聞いた佐伯健太郎。
進路に迷っていた健太郎は、太平洋戦争の終戦間際に特攻隊員として出撃した零戦パイロットだったという祖父のことが気に掛かり、かつての戦友たちを訪ねる。
そして、天才的な技術を持ちながら「海軍一の臆病者」と呼ばれ、生還することにこだわった祖父の思いも寄らない真実を知ることとなる・・・。
現代日本の平和は、多くの人の犠牲の上で成り立っているのだと、改めて考えさせられる。
戦争を知らない世代ばかりになった今、平和の有り難みを感じるキッカケも無く、平和過ぎて「平和ボケしている」とまで言われている。
しかし、平和ボケになるほど平和だという事は、とても幸せな事かもしれない。
『永遠の0』の「ゼロ」は、表向きは零戦を指しているが、私は「死」の意味もあるのではないかと解釈した。
永遠に残る「ゼロ=死」の意義。
肉体的には「ゼロ」になっても、その「心」は永遠に語り継がれ、残る。
本作の「ラスト5秒」が終わった後、「ゼロ」から長く険しい物語が始まる。
『0は永遠』なのだ。
それを、0から1、1から2へと、我々がバトンを受け継いで語り継がなければいけないし、多くの「ゼロ」の意味を考えなければいけない。
今、誰のために生きているのか、何のために生きているのか。
自分の「生きる原動力」は何なのか・・・。
「愛している、とは言いませんでした。我々の世代は愛などという言葉を使うことはありません。彼は妻のために死にたくない、と言ったのです。それは私たちの世代では愛しているという言葉と同じでしょう。」
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