
「自然は連続殺人鬼だ。鮮やかな手口で大量の人間を次々に殺す。だが、心の奥底では捕まりたいと願望している。世間に自分の手口を語りたいからだ。だから必ず何かヒントを残している。」
映画を鑑賞後、暗い部屋から明るい外に出て、いつもと変わらない平和な街の光景にホッとする・・・という感覚は久しぶりだった。
それほどリアルで恐ろしい「世界の崩壊」に引き込まれた。
数ある『スター・ウォーズ』のパロディ映画の中でも傑作の一つ『スペースボール』を生み出したコメディ映画の巨匠メル・ブルックス。
その息子マックス・ブルックスの著書『WORLD WAR Z』を『007/慰めの報酬』のマーク・フォースター監督が映画化した本作は、原作の「複数の人物の証言」によるオーラル・ヒストリー形式と異なり、ブラットピット演じる国連職員の視点を通して「家族愛」溢れる物語が展開する。
ウイルスの様に「驚異」が世界規模で蔓延する点、軍隊アリの様な数千・数万という集団で獲物に全力疾走で群がる点、噛まれた人間がたった12秒で感染する点、全てにおいて「スピード」が凄まじく、絶望感がハンパない。
そんな絶体絶命の世界的な危機を救うべく、国連の男が「探偵」の様に世界を飛び回る。
フィラデルフィア、ニューヨーク沖、韓国、イスラエル・・・という舞台の移動距離と、場面展開の「スピード」も気持ちよく、作品全体のテンポが特に素晴らしい。
オープニング早々に訪れる「絶望の始まり」と、ある重要人物が唐突に「あっけなく、あっさり」と、そして実に滑稽なキッカケで亡くなる意外な仕掛けも絶望感をさらに煽る。
原因究明の旅の中で、感染するまでの「12秒」を測る方法や、感染者の習性を見抜くタイミング、散りばめられた数々の「ヒント」を配置して小出しにする脚本も巧い。
本作は、フランス映画史上最大の問題作である『ポンヌフの恋人』の様に、いろいろな諸事情で撮影が難航し、撮り直しと追加撮影などで製作費が膨れ上がり、製作中止の危機に直面したが、「ペプシ社」の援助でなんとか乗り越えたそうだ。
その恩返しの様にクライマックスのある場面で「ペプシ」が粋な登場をして笑いを誘う。
特にクライマックスの場面で脚本や撮影が難航したそうだが、結果的に素晴らしい幕引きに仕上がっていると思う。
そして、エンドロールに流れるMuseの「Follow me」のインストがとても印象的で、壮大な物語を振り返りながら切ない余韻に包んでくれる。
「携帯電話の電源はお切りください。」
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