
「6年間育てた息子は、他人の子でした。」
潜在的な「アダルトチルドレン」を感じさせる、完全なつもりで実は不完全な「父」を福山雅治が見事に演じ、自然な子供の姿を撮らせたら右に出る者がいない是枝監督が、心情を語る風景の連続と、淡々とした「日常」の中に、静かに「嫌な予感」が忍び寄る様を驚くほど繊細に表現している。
申し分のない学歴や仕事、高級マンションと何不自由ない暮らし、そして、妻と息子との幸せな家庭を自分の力で勝ち取ってきた男。
順風満帆な人生を歩んできたが、ある日、6年間大切に育ててきた息子が病院内で他人の子どもと取り違えられていたことが判明し、人生で初めての壁に直面する。
前触れもなく突如として訪れる「人生の試練」を、受け入れ、乗り越えなければ再び幸せな日々は取り戻せない。
「血の繋がり」か「愛した時間」か、どちらか一つを選択しなければならない。
「金銭感覚」から「遊び方」「励まし方」「しつけ方」「愛し方」など、全てが対照的でありながらも全く同じ辛い境遇に苦悩する二組の夫婦の姿と、過酷な現実を把握できないままの子供たちの「大人には判らない不安」を、父性の温かみに欠ける主人公を軸に、リアリティ溢れる演出と映像で生々しく表現されている。
いつも「大人の事情」に振り回され我慢しなければいけないのは、決定権も発言権も無い「子供」たちだ。
子供にとって一番「大切なもの」とは何か。
それを第一に考えれば「家族の幸せ」への手掛かりが見つかるのかもしれない。
これほど「子供の繊細な心」を丁寧に、大事に、優しく描いた作品は今まで観たことが無い。
子供が「血縁」の事など考えているわけはなく、シンプルに「パパとママが大好き」という感情と、「安心感」を求めて生きている。
上映中の120分間、涙が一度も止まらなくて、劇場からの帰り道でも、帰宅してからも、たった今も、数々の場面を思い出して涙が溢れてくる。
恐らくこれからもずっと、この作品の《凄まじい余韻》を忘れる事は無いだろう。
「前例では、100%ご両親は交換という選択肢を選びます。」
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