SHORT PEACE | 愛すべき映画たちのメソッド☆

愛すべき映画たちのメソッド☆

映画感想家・心理カウンセラー・芸術家のNatsukiです☆

『映画にどんなに素晴らしいメッセージが含まれていようと
「娯楽性」がなければ作品としては失敗だ』/レオナルド・ディカプリオ



「アニメを失った大人たちへ。」

「SHORT PIECE = 短編」ではなく「SHORT=短い・PEACE=平和」。

大友克洋監督「火要鎮」、森田修平監督「九十九」、安藤裕章監督「GAMBO」、カトキハジメ監督「武器よさらば」の4作品と、森本晃司監督による「オープニング」によるオムニバスアニメ映画。

『SHORT PEACE』というタイトルは大友克洋が1979年に発表した初短編漫画作品集のタイトルと同じで、映画版の構成は「日本」というテーマに絞られている。

象徴的に見え隠れする「富士山」がそれぞれの短編を繋げる役割りを持っていたり、猥褻と暴力の雰囲気が多少漂う「大人の日本昔話」という方向性が非常に「現代日本的」で洗練されていて日本人として誇らしい。

『20世紀少年』を描いた漫画家の浦沢直樹は、大友監督の初短編集「ショート・ピース」を、影響を受けた作品の一つとして挙げているほど「大友魂」を受け継ぐひとりとして知られている。

『おおかみこどもの雨と雪』『サマーウォーズ』の細田守も大友監督とお互いの才能を認め合う仲として有名で、「豪華絢爛な挑戦の数々に圧倒され、瞬きする暇もありません。大友克洋監督に改めて深い敬意を抱きます。今までのアニメーションでなかったことを実現させた。」と本作に向けてのコメントを発表している。

完全に「大人向け」のダークでビターでバイオレンスな本作の中でも、やはり大友克洋の「火要鎮」は圧倒的インパクトと美しさがあり、絵巻物風の実験映画っぽい冒頭5分と、後半の大スペクタクル場面のバランスと、ラストの思い切った「幕引き」が絶妙で、とても引き込まれる。

出だしの絵巻物部分は「時間や場所を飛び越える絵巻物の効果をアニメーションのジャンプカットに応用した」という。

主人公カップルの《悲恋》への長い年月を「幼少の頃からのジャンプカット」で描きつつ、燃え盛る江戸の街の恐ろしさと、火消し達が延焼を防ぐために行う「家屋の破壊」の圧倒的カタルシスと、倒壊のカタストロフィを我々に見せつける。

この辺りは『AKIRA』や『スチームボーイ』でお馴染みの大友克洋の真骨頂である「破壊スペクタクル」を短編にギュッと詰め込んだ様な濃密度で、『MEMORIES』内の「大砲の街」を彷彿とさせる画期的アイデアに満ちた新感覚アニメーション。

江戸の大火事の裏には、その時代ならではの「悲しい片想い」があり、その恋の顛末はとても深い余韻を残す。

オムニバスである本作を時系列の飛ぶ一本の映画として脳内補完して観ても非常に面白く、戦闘意欲だけあっても武器が無ければ「争いは起きない」という《痛烈に戦争を皮肉った》ラストと《モザイク処理》は、アニメーション史上に残る衝撃と笑撃。

「これが原点、これが至宝。」



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