「わたしたちって、このまま一緒にいても絶対『よくできました』止まりな気がしちゃうよね・・・。」
大学時代の仲間、想い出の曲、今は誰かと結婚しているであろう昔の恋人。
それらがビートルズの名曲「Golden Slumbers」=【黄金のまどろみ】の中で再びメロディを奏でだした時、絶望の中で一筋の光が差す。
そして、消えかけていた絆の炎が名曲と共に現在に蘇る。
「この曲を書いたポールはバラバラになった皆をさ、もう一度つなぎ合わせたかったんだよ。」
無意味な事など何もない人生のあらゆる出逢いや別れや出来事は、全て同時進行で今も進化していて、時代を超えて再び巡り逢えるキッカケを待っている。
伊坂幸太郎の作品はいつもそんなテーマで満たされている。
エンドロールで流れる斉藤和義の楽曲「幸福な朝食 退屈な夕食」。
伊坂はサラリーマン時代にこの曲を聴いて作家になる決意をした。
伊坂の数々の傑作小説とそれらの映画化作品は全てこの1曲が無ければ存在しなかった。
その一人の運命を変えた曲と彼の小説が、時代を超えて映画で巡り逢う。
劇中の主人公も人生最大で最悪の事態に翻弄されながらも【過去】に助けられていく。
誰もが【今】だけでは生きてはいけない。
喜びも悲しみも笑いも愛も、その全てが心のパワーとなり人は強くなっていく。
信じる心と希望が、常識とイメージを覆すという奇跡的瞬間がこの作品のラストで待っている。
何気ない前フリと伏線が乱れ打ちで後半に繋がりまくる快感は『フィッシュストーリー』と同じく圧倒され釘付けになる。
初めは直球のサスペンスと思わせといて、ハリウッド映画でも表現された事のないエンターテイメントの変化球が鋭い角度で落ちてくる怒涛のラストは、笑いと涙の眩い連続打ち上げ花火。
全編、花丸の『たいへんよくできました』スタンプを押せる素晴らしさ。
「思い出っつうのは、だいたい、似たきっかけで復活するんだよ。自分が思い出してれば、相手も思い出してる。」
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