アブノーマライゼーション | しあわせになりたかったのに

しあわせになりたかったのに

すみませんでした。

他人は、どうしようもない。
それ以上に、自分がどうしようもない。
だから許しを請い、贖罪をする。
けれど、どんなに祈ろうとも、自分のどうしようもなさは救われない。
存在するという罪、まさに原罪。

人間なんて、そんなものかもしれない。
存在するだけで、罪を重ねる。
環境を破壊し、生物を死滅させ、いずれ地球を喰い尽くす。
だめだと分かっていても、やめられない。
遅かれ早かれ死ぬしかない。

普通の人の社会で、普通でない自分は迷惑をかける。
迷惑をかけないよう、自分なりに努力はした。
自分を責めながら、他人を恨みながら、普通になろうともがいてきた。
けれど欠損した普通を埋め合わせる術は、どこにもなかった。
どうしたって自分はどうしようもないままで、他人には迷惑をかけてきた。

まわりには、楽しげな普通の世界が広がっている。
他人が当たり前に得るしあわせに、自分も手を伸ばし、背伸びをし、飛び跳ねた。
そんな自分の振る舞いを、他人は奇妙だと笑っていた。
埋まることのない他人との異和に、自責と恨みの念がよどむ。
贖罪と殺意は同じ場所で生まれる。

普通の人の寛大な愛で、普通でない自分は生かされている。
差し出される愛をただ貪り、這いつくばって生きている。
自分の無能を許されると引き換えに、他人からの嘲笑を許さざるをえない。
普通の人は言う。
「多様性を受け入れよう」。

ふざけるな。
異常性を謳え。
苦しみを叫べ。
他人に認められる必要なんてない。
どうしようもない僕は、どうしようもないまま生きてやる。