すごく、
すごく好きな、
歌手がいてさ。
歌手っていうのかな。
歌手じゃないな。
ヴァイオリニストかな。
わかんないけどさ。
キーボードも、
アコーディオンも、
フルートも、
なんだって弾いてたし、
なんだって吹いてたし、
なんだって奏でてたんだけどさ。
HONZI、
知ってるだろ?
うん。
まあ、
いいけどさ。
好きなんだよ。
とてつもなくさ。
それはもう、
とてつもないんだよ。
圧倒的に好きなんだよ。
たとえば灰色の風が吹いて世界が終りそうなときに、
僕はHONZIの歌をうたうくらいにさ。
それくらいに好きなんだよ。
たとえば風の妖精が、梢に腰掛けて HONZIの歌をうたうとさ、
遠いむかしに滅んだはずの、小さな鳥がチイと飛んでくる。
そんなふうに、好きなんだよ。
わかんないかな。
いいんだけどさ。
でもさ。
僕はこんなに、
HONZIの音も、歌も、好きなのにさ。
僕はHONZIのことを、何も知らないのさ。
それこそ、
なにも、さ。
なにも、しらないんだよ。
それって、
とてつもなく、
果てしなく、
限りなく、
寂しいことじゃん。
でも、
考えてみるとさ、
だいたいのことが、
そんな感じだったりするわけだよ。
ねえ。
寂しいだろ。