北海道民のWBC | THE WING OF EIEL

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エイエルの翼は何処へ飛翔するのか

 

14年ぶりに世界一になったワールド・ベースボール・クラッシック。まだその余韻は冷めやらず、サッカーW杯が始動したにもかかわらず、テレビのニュースやワイドショーは情熱的にWBCのことを取り上げ続けている。

 

決勝戦の視聴率は平日の午前中にもかかわらず関東地区で42.4%。すごい視聴率だが、実は札幌地区では50.0%だった。加えて準々決勝イタリア戦の北海道全体での視聴率は驚くことに56.9%だったのである。

 

昭和の紅白歌合戦かというような脅威の人気だが、北海道だけがなぜこんなに飛び抜けてWBC人気が高いのかと言うと、北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」がオープンするから野球人気が沸騰している・・・というわけではない。

 

ファイターズは昨年ぶっちぎりの最下位で、正直ファン離れがかなり深刻なことになっていた。新庄人気も負け続けていては神通力を失い、シーズン終了後のイベントで一旦退任を匂わせて再登場するというパフォーマンスを行ったが、完全に空振りに終わった。ファンは「ああ、やっぱり辞めるんだ」という雰囲気で、悲鳴もどよめきもほとんど起きなかったのだ。

 

今年新球場の話題と、新戦力がかなり入団したことで話題になってはいるが、エスコンフィールド杮落としのオープン戦はエラーや走塁ミス、貧打で何も良いところがなく西武に1−3で敗戦。WBCと比べてしまうと草野球を見ているような悲しさだった。新球場特有のマイナス面なども言われているが、それを言うなら相手チームの方が全く初めてなのだから不利なはずだ。言い訳などできない。

 

新球場オープンでその施設の素晴らしさからしばらくは話題が持つだろうが、負け続ければ交通も不便な場所だし、さらにファンが離れる可能性もある。

 

ではそんな状況でなぜ北海道民はWBCだけは熱狂的に応援するのか? 実は今回のWBCチームはほとんど日本ハムファイターズかと思えるくらい、ファイターズの卒業生が多い。

 

まず首脳陣は栗山監督をはじめ、白井ヘッドコーチ、吉井ピッチングコーチら、7人のコーチのうち5人がかつてのファイターズの首脳陣。そしてブルペンキャッチャーの鶴岡も元々ダルビッシュの専属キャッチャーの役割を果たしていた選手だ。

 

選手も現役のファイターズ選手はピッチャーの伊藤大海だけだが、2番で大活躍した近藤健介は昨年までファイターズの中心選手だったし、何よりダルビッシュ有と大谷翔平はファイターズが生んだ大スターだ。

 

今回、私の仕事で各家庭を回っていても、ジイさんバアさんが興奮しながらWBCの話をしていた。普段野球を見ないという人でも「見ずにはいられなかった」と言っている。

 

そう、今回のWBCは北海道民にとっておらが町のチームが世界一を争って大活躍しているのであり、自分たちが応援して育てた大スターが世界のトップに立った大事件なのだ。ダルビッシュや大谷を応援する道民は、自分の息子か孫がものすごいことをやっているのと同じであり、我を忘れて声援を送りたいのだ。

 

入団した時は悪ガキだったダルビッシュも人間的に大きく成長し、チーム全体のことを考えるのみならず、選手にも見ている人にも野球の楽しさを思い出させようと一生懸命だった。栗山監督も目指していたのは今回のWBCを通じて野球そのものの人気回復であり、後に続く子供達に夢を与えたいということだった。

 

それが大きく花開き、結実した今、その喜びが日本のプロ野球に広がり、ファイターズを通して道民の歓喜に繋がっていってもらいたいと切に思う。