海老坂武「祖国より一人の友を」から | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

「野坂によれば右傾化には五つの内容があった。第一は軍事予算の聖域化。今日ではこれがアメリカに握られている。予算の膨張に伴い軍人が君臨し始め国家統制と国民精神の統合に進む、これが第一点。第二は、憲法第9条だけでなく、それ以外の条項をも改めさせようとする動き。人権をチェックする、公共の福祉の名の下に私権を制限しようとする。狙いは教育勅語、家族制度の復活で、これは国家至上主義につながるであろう、と。今日(2007年)からみて面白いのは、『この意図を露骨に進めるリーダーが、平和憲法の申し子といっていい鳩山邦夫氏』と野坂が断じていることである。第三は、靖国神社の国家護持の動き、80年8月15日に、首相鈴木善幸は17人の閣僚を引き連れて靖国神社に参拝していた。野坂に言わせれば、この動きを推進している連中にとって、戦死者などはどうでもいいこと、彼らは、この先、若者が死に追いやられたときに国家が死後も面倒を見てやるよ、という『靖国保険のセールスマン』にすぎない。このセールス活動を支えているのは『国家のために死ぬことが最高の美徳という考え方』で、これは右傾化どころか、『前近代的物狂い』ということになる。第四は、教科書問題。侵略を進出と言い換え、朝鮮人の強制連行の『強制』を削除させようとする文部省の動きである。第五が臨調。自立自助を強調しながら不況を予測しての全体主義国家への一里塚、組合つぶしである。」

 

 ちょっと長いが、残しておきたい文章である。