山本淳子「平安人の心で『源氏物語』を読む」その4 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「光源氏、二十三歳の秋。葵の上の死後、光源氏からの音沙汰がなくなり見限られたことを悟った六条御息所は、光源氏との決別を決め、娘とともに伊勢に下ろうとしていた。御息所が潔斎のために籠る野宮を光源氏は訪う。二人は長年の愛執を振り返り、涙を流し和歌を詠み合って別れる。その冬、光源氏を常に愛息子として慈しんでくれた父・桐壷院が崩御した。光源氏は精神的にも政治的にも後ろ盾を喪い、悲しみに暮れる。一方未亡人となった藤壺への思いはやまず、光源氏は実家に帰った彼女のもとに忍び込む。だが思いを遂げることができず、むしろ藤壺心を遠ざける結果を招いてしまう。光源氏との間の不義の子である東宮(のちの冷泉帝)の安全だけを願い、世の噂の危ぶむ彼女は、桐壷院の一周忌を終えて出家する。少年の日から義母への恋は、ここに永遠に終止符を打たれたのだった。喪失感の反動のように、光源氏は朧月夜との危険な恋にのめり込む。彼女は朝廷の女官長・尚侍として朱雀帝に仕える身となっていたが、内裏でも、また彼女の実家の右大臣邸でも、二人を逢瀬を繰り返した。そしてそれはついに、朧月夜の父・右大臣と、姉で朱雀帝の母でもある弘徽殿の大后の知るところとなる。『このついでに光源氏を失脚させるよい機会』。彼を憎悪する大后はそう策略をめぐらせる。」


 十帖『賢木』のあらすじから抜粋