W・S・チャーチル「第二次世界大戦1」その4 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「1934年11月28日、冬の議会が開会されたとき、私は数名の友人の名において修正動議を提出し、『わが国の防衛力は、そしてとくに我が国の空軍力は、もはや陛下の忠良なる臣民の、平和と安全と自由を維持するための妥当性を欠いている』と宣言した。満員の議場は耳を傾けていた。私は、われわれと世界に対する重大な危険を強調してあらゆる議論をつくした後、明確な事実に論及した――『私はまず、ドイツはすでに、この瞬間において、空軍力を保有していることを断言いたします。・・・しかし、これは・・・急速にわが空軍との均等に近づいているのであります。第二に、・・・ドイツ空軍は明年の今頃には、少なくとも事実上わが空軍力か、またそれを上回るほど増強されているかもしれません。第三に、・・・1936年末までには、すなわち、あと1年後には、またはただいまより2年後には、ドイツの空軍力はほとんど五割方優勢になり、1937年にはほとんど2倍以上になるでありましょう。』」


「私の後を受けて直ちにたったボールドウィン氏は、この問題と真正面から取り組み、空軍省の顧問たちによって作成された資料を基礎にして、私に直接反ばくを加えた――『ドイツが急速にわれわれと均等に近づきつつあるということは、事実ではありません。・・・ドイツは軍用機の生産に活発に従事いたしておりますが、しかしドイツの本当の力は今日ヨーロッパにおけるわが空軍力の半分にも及びません。明年のいまごろの状態に関して・・・ドイツの空軍力が少なくともイギリスと同等になり、また恐らくわれわれよりも優位に立つだろうとは、はるかな見当ちがいであります。われわれの算定では、ヨーロッパだけでも我々は、ほぼ50パーセントの開きを持つことになるでありましょう。私は2年先の将来は予測できません。しかしチャーチル氏は、1937年にはどんなことが起こるかまで言及されております。今までなされてきた調査では、私は、チャーチル氏の言われる数字は、かなり誇張されていると信じております。」


「事実上首相ともいうべき人から出たこの全面的な保障は、、不安を感じていた大多数の人々の心をなだめ、多くの批評家を黙らせた。私の明確な声明がこの非の打ちどころのない権威によって否定されたのを知ると、すべての人々は喜んだ。しかし私は全く納得しなかった。ボールドウィン氏は顧問たちから真実を知らされていないため、要するに事実を知らないのだと私は思った。」


 政治とはこのようなものかということ。