W・S・チャーチル「第二次世界大戦1」その2 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「1918年10月、ドイツ軍の一伍長はコミーヌ(ベルギー国境寄りのフランスの町)の近くでイギリス軍の攻撃を受け、毒ガスのため一時失明した。彼がポメラニアの病院の病床にあったとき、敗北と革命が全ドイツを襲った。一介の名もなきオーストリアの税関吏の子であった彼は、若いころ大芸術家になる夢を抱いていた。ウィーンの芸術アカデミーへの入学に失敗した後、彼はこの首都で、のちにはミュンヘンで貧しい生活をつづけた。ときには家屋のペンキ職人になり、またしばしば臨時雇いの労働者になったりして、物質的欠乏に悩み、表面にこそ出さなかったが、内心では世の中は自分の出世を拒んでいるのだと、激しい怒りを抱いていた。」


「しかしこのような不幸も、彼を共産主義陣営には走らせなかった。それどころか殊勝にも、ドイツとドイツ国民に対し異常なまでの人種的忠誠心と、熱烈にして神秘的なまでのあこがれの念を、ますます深めた。彼は大戦勃発とともに敢然として銃を取り、ババリア連隊の一兵卒として4年間西部戦線に従軍した。これがアドルフ・ヒトラーの初期の運命であった。」


 チャーチルのみたヒトラーを追ってみたい。