仲正昌樹「マックス・ウェーバーを読む」その6 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「ウェーバーは、『職業政治家』が生まれてきた歴史的経緯を説明したうえで、『政治家』に必要な資質を問題にする。政治家が得られる第一の内的喜びは、自分が他人を動かす権力に関与している、日常を超えているという昂揚感、『権力感情』である。この感情を制御して、権力にふさわしい振る舞い方をするには、①情熱、②責任感、③判断力の三つの倫理的資質が必要である、という。」


「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、硬い板に力をこめてじわじわッと穴をくり貫いていく作業である。もしこの世の中で不可能事を目指して粘り強くアタックしないようでは、およそ可能なことの達成も覚束ないというのは、まったく正しく、あらゆる歴史上の経験がこれを証明している。しかし、これをなしうる人は指導者でなければならない。いや指導者であるだけでなく、――はなはだ素朴な意味での――英雄でなければならない。そして指導者や英雄でない場合でも、人はどんな希望の挫折にもめげない堅い意志で今すぐ武装する必要がある。そうでないと、今、可能なことの貫徹もできないであろう。自分が世間に対して捧げようとするものに比べて、現実の世の中が――自分の立場からみて――どんなにおろかであり卑俗であっても、断じて挫けない人間。どんな事態に直面しても『それにもかかわらず!』と言い切る自信のある人間。そういう人間だけが政治への『天職』をもつ。(『職業としての政治』)」