小倉紀蔵「韓国は一個の哲学である」その4 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「韓国人は自己の目標とする人間像の種類によって、大きく分けて〈狭義の両班志向〉〈士大夫志向〉〈ソンビ志向〉という少なくとも三つのベクトルで上昇している。これらを決して混同してはならない理由は、これらのベクトルは互いに激しく激突し、そこにこの社会の〈力〉が生じているからである。」


「ここでいう狭義の両班志向は、道徳・権力・富を同等に重要視し、この三つを同時に掌握することを人生の目標とすることを指す。〈士大夫志向〉は、富よりもむしろ道徳と権力の掌握を目指す。〈ソンビ志向〉は、権力や富とは距離を置き、道徳のみに邁進することである。この三つのベクトルの動きは、韓国社会の方向を決定するほど重要なので注目に値する。」


「付け加えていうならば、これらとは別に、韓国には〈中人志向〉も存在する。『中人』とは朝鮮時代に技術職についていた世襲の家柄であり、身分的には広義の両班と常民の中間に位置し、両班からは厳格に差別され、身分の上昇も不可能であった。しかし科挙の雑科を通じて技術官となり、通訳、医学、法律、天文学などの専門知識を囲い込んだので強大な勢力を形成し、経済的にも豊かで一部は両班を凌駕するほどであった。今日の韓国人が法曹界と医師に強い志向を持ち、また外国語習得への熱情に取りつかれているのは、この豊潤な経済力をもった〈中人志向〉のためだ。」


 朱子学の実践編とりあえず終了