小倉紀蔵「入門朱子学と陽明学」その7 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「陽明学を知るうえで最も重要な文献は、王陽明の発言や手紙を弟子たちが記録・編集した『伝習録』である。」


「王陽明の思想を理解するためのキーワードは、格物、心、良知、万物一体、知行合一、無善無悪などであろう。」


「だが、それらをすべて貫くものとして、陽明学の核心を一つだけ挙げよといわれれば、『心をすべてにシンクロナイズ(同期)させるエネルギー』ということに尽きる。」


「朱子学は均衡的動態の美にこだわるのに対して、陽明学は『一つになること』に徹底的にこだわる。だから、『ひとつになること』と美のどちらを選ぶかという究極の選択肢においては、陽明学は美を捨てることができる。それが『狂』という概念である。『狂』というのは、『ひとつになること』を貫徹するためならば、外見上の均衡や秩序を捨て去るという覚悟なのである。乱調でもよい。『千万人といえども吾ゆかん』という気概で道徳の火だるまとなって突き進むとき、美しい均衡を捨て去らねばならない覚悟が求められる。否、その乱調や不均衡が美なのである。」