田尻祐一郎「江戸の思想史」その2 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「内乱の時代をくぐった人々の心の拠り所は、中世の精神世界から連続した仏教的な境地を基底としてものであったが、《武威による泰平》を築こうとする力は、それをも組み伏せる。」


「仏教が築いてきた厚みはやはり圧倒的に偉大なものであり、江戸時代の初頭においても、(人間とは何か)という根源的な問題に突き当たった時、人々は、禅をはじめとする仏教から学ぶことで自らの思索を深めようとした。日本の儒教もまた、禅の伝統の中から、禅に対抗することによって生まれたという出自をもっている。藤原惺窩は相国寺で、林羅山は建仁寺で、山崎闇斎は妙心寺で、それぞれが京都の臨済宗の名刹で禅の修行をすることから学問を初めている。この三人はいずれも、かって学んだ禅を離れ、人倫の道としての儒教を選んでいくのであり、江戸期の朱子学はこの三人から発展していくことになる。」


 この本は、江戸時代の思想を人物ごとにコンパクトにまとめてある。