水野和夫「資本主義の終焉と歴史の危機」から | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「日本の10年国債利回りが1997年に2%を下回ってから20年近い月日が経とうとしています。1997年と云えば、北海道拓殖銀行や山一証券が破たんし、日本の金融システムが大きく揺らぎはじめた年です。ちょうどそのころ、私は証券会社のエコノミストとして、マクロ経済の調査に明け暮れていました。当初は、景気の低迷によって、一時的に利回りが落ち込んだのではないかと考えていましたが、その後も一向に2%を超えない。ITバブルで景気が回復しても、戦後最長の景気拡大を経験しても、国債の利回りだけは2%を超えない。」


「一体なぜ、超低金利がこれほど長く続くのか。その謎を考え続けていた時、歴史の中に日本と同じように超低金利の時代があることに気づきました。それが『長い16世紀』のイタリア・ジェノヴァで起きた『利子率革命』です。『長い16世紀』に起きた『利子率革命』は、中世封建制の終焉と近代の幕開けを告げる兆候でした。だとすれば、日本で続く超低金利は、近代資本主義の終焉のサインなのではないか。」


「そんな仮説をたずさえて、『長い16世紀』と現代を比較してみると、単なる偶然では片づけられない相似性が次々と見つかり、現代は『長い16世紀』と同様の『歴史の危機』にあることを意識するようになってきました。」


 著者の問題意識から。

「日本社会がついに宋朝以降の「中国の近世」と同じような状態に移行―中国化しつつある、と論じた『中国化する日本』と同じような手法か。