「多数決ということをよくいいますが、これはどういうことか。多数決についても、もし数が多ければ多いほどよいという考え方に立てば全員一致がいちばんいいということになります。だいたい閉じた共同体というものは全員一致です。つまり閉ざされた社会というものは伝統的な一つの価値が通用しておって、その価値を認めないものはそのことで村八分になる。価値が画一化しているわけであるますから、だから当然そこにでは全員一致になる。だれでも同じような考え方をしている。したがって全員一致になるのは当然なんです。つまり、デモクラシーが多数決だというのはどういう意味か。多数は少数に勝つという意味が含まれているのは今さらいう必要もありませんがそれがすべてではない。多数決という考え方には、違った意見が存在する方が積極的にいいんだという考え方が根底にある。違った意見が存在するのが当たり前で、それがないのはかえっておかしいという考え方ならば、全員一致はむしろ不自然だということになるんです。ここではじめてつまり、反対意見に対する寛容、トレランスということが徳とみなされるようになる。これが基本的な、『多数決』についてのものの考え方の違いになってくるわけであります。つまり、こういう反対意見に対する寛容ということが、民主主義の重要な徳といわれる理由はすべてそういうところからでてくるわけであります。つまり、歴史の長い教訓によって、今日異端の意見があすは認められ、今日はいいとされるものも、かつては異端の意見であったということが、あらためて反省され、それが少数意見に対する寛容の徳の前提となっているわけであります。」
論文は難解だが、講演はわかりやすい。