「天才の秘密」その3 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「人生には、『臨界期』と呼ばれる年齢がいくつかある。その年齢以下で経験させなければ、以後いかなる努力をなそうとも身につかない技術、ある年齢以下でスタートさせないと、決してその分野では一流の域に達することのできない技術がある。もちろん例外の存在までは否定できないが、年齢という厳しい壁が、物事を修得してゆく過程にあることを認めざるえない。」


「臨界期の顕著な一例は、ヨーロッパ言語修得の際、われわれ日本人には難関とされるLとRの発音、および聴き取りの技術である。最近の学説によれば、LとRの区別が人間の脳内に形づくられるのは生後8,9か月の頃であるらしい。それまでに正確な発音を聞いて育てば自然に発音能力が身につくが、その時期を過ぎると、努力して修得しなければ身につかない。」


「モーツァルトは、産湯に漬かった時から父親と姉の奏でる音楽を耳にしながら育ち、三歳の頃から、名教師である父親に理論と実技の双方にわたるシステマティックな教育を受けたのであった。まさに幼児教育の理論通りの人生を歩いている。」


クローバー クローバー


 「旅は人間の脳を鍛える。人間の脳は活発な刺激を受ければ、記憶力も情報処理能力も上がる。そのためにもっとも与って力あるのが『空間情報の変化』、すなわち、旅である。空間情報の変化とは、『偶然に何かに出会う可能性』のことを言う。いつもと違う場所で初めての経験をすると、強い刺激が脳に与えられ、同じ土地で過ごす日常とは次元の異なる学習能力が生まれる。『かわいい子には旅をさせよ』という格言のとおりである。」


「モーツァルトは幼児、生地ザルツブルクで、稀有の名教師レオポルトのもと、徹底した基礎教育を受けた。イタリア語、フランス語などの語学教育も施された。ところがその後、旋律法、対位法、オーケストレーションなどの教育は、すべて旅先で受けていたのである。しかも学習の時期は、六歳から十二歳までの幼児教育にもっとも大切な時期(ウィーン、パリ、ロンドンなど)と、十三歳から十七歳までの多感な少年期(3度のイタリア)であった。」