「人生の対話」その6 | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

 「岩波新書の一冊として上梓された不朽の名作『日本の思想』、この書物、『ドイツ語的文体』のおかげで『教養のある日本人にさえ難しい』と、丸山の他の論文を英訳したアイヴァン・モリスが評し、『神秘的なまでに難解な文章、重厚で見慣れぬ論理』とコロンビア大学東アジア研究所のキャロル・グラックが慨嘆した定評ある難文で書かれた二つの論文と、正反対に、頭脳明晰ならば高校生でも読解可能な話文体で書かれた二論文から成るためか――大学入試の設問に採用されるケースが極めて多く、そのためだけではないと思うが、ロング・ランで定評のある岩波新書の中でも屈指の長寿命を誇っている。」


「丸山は生前、自分の書物から頻繁に出題されるわが文章と、設問の作り方について触れ、「『傾向と対策』みたいな本にぼくの文章と入試問題が載るでしょう。どんな問題に仕立てあるか、読んでみる。ところが、難しいんだなあ。『正解にマルをつけよ』とか、回答らしきものがいくつか並んでいるんだが、どれが正解なのか、僕にもわからないものがある。著者にも正解がわからないんだから、参っちゃうんだ」と、苦笑していた。」


一方、小林秀雄の文章について、


「あるとき、娘が、国語の試験問題を見せて、なんだかちっともわからない文章だという。読んでみると、なるほど悪文である。こんなもの、意味がどうもこうもあるもんか、わかりませんと書いておけばいいのだ、と答えたら、娘が笑い出した。だって、この問題は、お父さんの本からとったんだって先生がおっしゃた、といった。へい、そうかい、とあきれたが、ちかごろ、家で、われながら小言幸兵衛じみてきたと思っている矢先、親父の面目丸つぶれである(《国語という大河》)」