「対話二題」その2 | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

「先生がよく仰っておられた『精神の貴族性』とは、そういうことなのですね。私たちは『貴族』というと、光源氏とかドン・ジョヴァンニとか、優雅だけれど無為徒食、色事に身をやつしているお公家さんとか伯爵しか思い浮かびませんが・・・・」


「違うんだなあ。本当の貴族とは、そういうものじゃないんです。起源はローマ時代で、暴君といわれた皇帝・ネロの家庭教師、一時宰相に相当する権勢をわがものにしていたセネカのモットーは、『人間の中にある内的理性に従って生きること。幸福な人生を送る最高の手段は倫理的な高貴さにある』でした。貴族にとって、一番大切なのは、『自制の精神』なんです。よく働き、つつましやかに勤倹な生活を送る。行動の前提は、深慮。加うるに健全な肉体」


「政治は、どんな政治形態であろうと、結果はそれを担う人間の質によって決まるんです。制度論議も大切だけれど、僕は優れたエリートをどう育てるか、本当の優れたリーダーを、一旦緩急あるとき選出できるか否かが、長期的に見た場合に国運を左右する大問題だと思います。」


 丸山眞男手帖68から抜粋