「文明論之概略」その4 | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「以上に加えて、私が『文明論之概略』の中心テーマと考えているものについて一言触れておきたいと思います。」


「それは、『精神』がどれほど重要なものか、ということです。『精神』と言えば、多くの人は『心』のことだと思います。しかし、私の考えは違います。『心』が、個人的で気分的なものであるのに対して、『精神』は、歴史的な厚みがありもっと多くの人のバックボーンになるようなものです。個々の心よりも、『武士道』や『キリスト教』のようなもの、あるいは会社や学校の伝統に近い存在です。」


「福澤は言います。「『文明論』というのは、人間精神の発達についての議論である。ただし、一個人の精神の発達ではなく、天下の多くの人の精神発達を一体として捉え、その発達について論じるものだ。だから、『文明論』のことを、『集団精神発達論』とってもよいだろう」


「また、言います。文明において最も重要なのは、髷を落とすことでも肉を食べることでもなく、建築物でも戦艦でも大砲でもない。法律や制度ですらない。それは、『文明の精神』である。と、そして『文明の精神』とは、個人の心のようなものではなく、『一国全体にあらわれた気風』なのだと言うことです。これを獲得することが最優先の最も困難な課題であり、逆に言えば、この難しい課題をクリアすれば後のことは易しいものだ、と断じます。」


 現代語訳をした斉藤孝のあとがきのコメント