「丸山眞男」その5 | さかえの読書日記

さかえの読書日記

琴線に触れたことを残す備忘録です。

「庄司薫の小説『赤頭巾ちゃん気をつけて』には、作者の同じ名をもつ語り手の、都立日比谷高校三年生が、東大法学部で『すごい思想史の講義をしている教授』と話した場面を回想するくだりがある。『たとえばぼくは、それまでにもいろいろな本を読んだり考えたり、ぼくの好きな下の兄貴なんかを見ながら、たとえば知性というものは、すごく自由でしなやかで、どこまでもどこまでものびやかに豊かに広がっていくもので、そしてとんだりはねたり突進したり立ちどまったり、でも結局は何か大きな大きなやさしさみたいなもの、そしてそのやさしさを支える限りない強さみたいなものを目指していくものじゃないか、といったことを漠然と感じたり考えたりしていたのだけれど、その夜ぼくたちを相手に、『本当にこうやってダベっているのは楽しいですね。』なんて言っていつまでも楽しいそうに話し続けられるその素晴らしい先生を見ながら、ぼくはぼくの考え方が正しいのだということを、なんというかそれこそ目の前が明るくなるような思いで感じとったのだ」。」


 

「庄司薫は、林達夫の評論集『共産主義的人間』の中公文庫版によせた解説で、次のように書いているが、それは、丸山の考えていたところとも重なるだろう。『価値の多元化相対化と同時進行する情報洪水のまっただ中で、ぼくたちは今その自己形成の前提となる情報の選択の段階ですでに混乱してしまおうとしている。ここで唯一の有効な方法とは、結局のところ最も素朴な、信頼できる『人間』を選ぶこと、本当に信じられる知性を見つけ、そしてその「英知」と『方法』を学びとるということ、なのではあるまいか」


 庄司薫は、東京大学の法学部で、丸山の演習に参加していたとのこと。赤頭巾ちゃんで芥川賞をもらったと思うがその後あまり聞かない。