佐伯啓思「ケインズの予言」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「自由市場という考えは、50年代、60年代を通じて社会主義の計画経済に対する西側の決定的な対抗手段であった。この時代のアメリカ経済学の主たる仕事は、社会主義的計画経済に対する市場経済の優位を描き出すことにあった。理論的次元では、これは、市場経済が計画経済よりもいかに効率性を達成するかという『証明』によってなされた。ここでは、市場の優位という主張が、装いとはいえ、まだしも『論証』という手続きを踏んでいたわけである。」


「だが、80年代の『新自由主義』においては、市場の論敵はもはや社会主義そのものではなく、資本主義の中にある社会主義的要素に向けられたのである。かくて、福祉主義が、官僚主義が、経済計画が、そして何よりもケインズ主義が攻撃された。端的に言えば、何によらず、『政府の活動』が攻撃対象とされたのである。ここで引き合いに出されたのがハイエクの『隷従への道』であった。この1944年に書かれた書物において、ハイエクは、西側自由主義諸国における社会主義的要素こそ自由に対する最大の敵だとみなしたのである。ケインズ主義や福祉主義はやがて全体主義という『隷従への道』を開くものだというのがハイエクの考えであった。」


 ハイエクの位置づけをあらためて認識したということ