「スミスが、現代にまで通じる『市場主義(マーケティズム)』の教父だとされるときには、そこにはおおよそ次の三つの命題が含意されている。その三つの命題とは、①市場は自己調整的なメカニズムをもった体系である。②自由な市場原理は国際経済にも適用できる。つまり自由貿易主義は正しく、これは『開かれた経済』の原理である。③政府の役割はできる限り狭い範囲に限定されるべきである。つまり『小さな政府』が望ましい。」
「この三つの命題を掲げたという理由で、スミスはまさに現代経済学の端緒を開いたとされるわけである。だがそうだろうか。スミスが述べたのはこうした命題だったのだろうか。またスミスが論述したあの『平明にして複雑な体系』をこれらの命題に還元mしてしまうことはできるのだろうか。」
まずは問題意識から。