「近代日本人の宗教意識」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「維新という政治改革の無血性について仏教と儒教がそこにもちだされているのは、おそらく仏教思想を彩る『不殺生(アヒンサー)』という考えと、儒教思想の骨格をなす『易姓革命』という考えがそれぞれの論者の頭の中にあったからではないだろうか。『不殺生』が非暴力の無血性と結びつくことはいうまでもない。そして『易姓革命』は天命によって有徳の君子が王位につくという、中国で古くから伝えられた政治思想であり、その背後には争闘を避ける禅譲の精神が流れている。」


「しかし、私は、両者のそれぞれの考えはやはり一面的なものではないかと思う。仏教や儒教の影響をいうならば、それ以前に神道の要因をあげなければならないのではないかと思う。なぜならば神道は、仏教の人生観や儒教の世界観を基礎づける上で日本人の深層意識に対して重要な酵母の役割をはたすものであったからである。それにくらべるとき、仏教の不殺生思想や儒教の易姓革命論などの各分論が、どの程度当時の日本人の間に浸透していたのかはっきりしない。」


とにかく読みやすい文章である。