「なにゆえぼくらは本を読むのか。子供のころ大好きだった本は、どんな理由で好きになったのだろう。おそらく、大部分の人間にとって、読書は旅なのではないかとぼくは思う。彼らにとって小説とは、冒険の旅へいざなう翼、まるで自分のもののように思える夢へといざなう翼なのだろう。」
「だが、一部の人間にとって、読書は現実逃避の手段ともなる。退屈や、不運や、孤独や、これ以上耐えられない場所や人間から逃げ出すための翼となるのだ。少なくともぼくが小説を読むときは、そこに刻まれた言葉が頭の中の声を掻き消し、ぼくがぼくであることを忘れさせてくれる。その間は、ぼくがぼくであることを嘆かずにいられる。そして、こういう理由から本を読む人々こそが、本に取り憑かれた真の読書家となり、熱狂的ファンともなる。彼らは、ヤク中がハイになったり、恋する人間が相手を崇めたりするのと同じ理由から、小説を読み耽る。つまりは、さしたる理由もなくその世界にのめりこむ。」
ミステリーはほんのたまにしか読まないが、時間を忘れて読んでしまう。