続『音楽の対話』から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「あのときも書いたけど、フルトヴェングラーを含めて、ナチス支配下の母国に積極的に居残った音楽家の姿勢には共通した何かを感じられますね。特にケンプとフルニエの音楽にはそれがある。毅然たる姿勢、凛とした音楽・・・。そのつもりで聴いてしまうから、そう聴こえるのかもしれないけれど、背筋をピンと伸ばして、孤高を守り抜いたという芸術です。精神の貴族性ですね。何者にも屈しない、現実から逃避しないという― 一番いい時代のヨーロッパの精神的遺産です。君のもってきたこの二人のライブ―ベートーヴェン生誕200年記念のパリ・コンサートですか。比類なき名演だな。音楽的な感性は正反対のように思えるけれど、共演が生んだ世界には毛ほどの違和感もない。ベートーヴェンの音楽に対する共感と尊敬の念と・・・そういう気持ちがこういう演奏を生むんですね。おそらく戦時中の共有体験が無言のうちに二人を結びつけているんだと思う。」


「私生活にあっては簡素を旨とし、『贅』という言葉の入る余地のない日常を送っていた丸山であるが、彼の生き方で最も見事だと思うのは、彼自身が生涯『精神の貴族性』を守りぬいたということ、その一言である。そして丸山は、そのような生き方を貫いた人が大好きであった。」



  「生き方」