小林秀雄「モーツァルトを聞く人へ」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「私は、モーツァルトの音楽が大好きだ。どうして好きかと聞かれても、

それは言葉でいうことが出来ない。たいていの人がモーツァルトが好きだと言うが、同時に物足らぬともいう。私は、好きで、何も物足らぬものはない、と答えられるだけである。私は、音楽家でもないし、音楽の研究家でもないから、音楽に対しては、いつも受身な態度をとっている。進んで音楽から、何かを貪ろうとしたことはない。ただ虚心に耳を澄まして、向こうから聞こえてくる音を細心の注意で捕えようと心がけているだけである。そういう私の態度に、いろいろな音楽家のうち、モーツァルトという人間が特に、驚くべき美を以て答えてくれたいうよりほかはない。」


 これから小林秀雄の「モーツァルト」を読んでいく。それにしても、作家の村上春樹といい、政治学者の丸山真男といい、それぞれの本業で一流の人には、音楽にも造詣の深い人が多い。