小林秀雄「宣長の源氏観」から | さかえの読書日記

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琴線に触れたことを残す備忘録です。

「本居宣長は、学者です。しかし、今の学者とは大変違う。今の学問はサイエンス、科学だが、宣長のころは「道」だ。宣長は、人間いかに生きるべきかを研究したのだ。」


「人間の一番肝心なこととはなんですか。幸、不幸ではないですか。人間、この世にたった何十年かの間生きていて、幸福でなかったらどうしますか。この世に生きていることの意味が分からないのではどうしますか。そこを教えてくれないような学問は学問ではない。昔の学問は、学者は、人生いかに生きるべきか、それをどうかして人に伝えようとしたのです。」


「人間をよく理解する方法は、たった一つしかない。それは、彼等を急いで判断せず、彼等の傍らで暮らし、彼らが自ら思うところを言うに任せ、日に日に伸びていくに任せ、遂に彼らの裡に、彼等が自画像を描き出すまで待つことだ。故人になった著者でも同様だ。読め、ゆっくり読め、成行きに任せたまえ。遂に彼等は、彼ら自身の言葉で、彼等自身の姿を、はっきり描き出すに至るだろう。」


 3段落目は、小林が「読書の工夫」の中でサント・ブーヴの言葉を引いたものである。